第51話


「君との契約は、もう終わりだ」



琥珀が、何を言ってるのか、理解出来ない。


視線を琥珀の顔へと向ける。


冷めた瞳は、何処までも蒼。



「約束を破ったのは、君だ」



私は、琥珀と約束など、1度もしていない。



「もう、話す事はない」



琥珀は、そう言うと、身体の向きを替えた。



「私は、1度も、忘れた事なんてない!

『逃げよう』と言って、私の手を握ってくれた琥珀を忘れてない!」



記憶を無くした振りをするのに、限界を感じた。


私は、琥珀が居ないと、何処にも行く場所がないのも知っている。



ドアを閉めかけた琥珀の動きが止まった。



「君に何が分かる?」



感謝のない低音ボイスは、いつもより更に低い。



琥珀が怒っている。



私の背中に、冷たい物が流れる。


確かに、私は、琥珀の全てを知っている訳じゃない。


琥珀が、何を考えているのかさえも、会話しないから、分かる訳がない。



「琥珀、もう止めよう」



私が、何を言いたいのか、分かっているはず。



「会話のない日常が、私にとって苦しいの。

琥珀が、傍に居ないと、生きていくのが辛い。

だから、もう止めよう。

あの人を殺したのは、私なのだから……」


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