第52話


幼い時、母親から、虐待を受けていた私。


幼い時、母親から、育児放棄をされていた私。


何かある度に、打たれた。


水が溜まったお風呂に、顔をつけられた事だってあった。


なのに、狂った様に暴れ出した人を、止める事が出来なかった幼い時の私。


あの日、あの人は、男の人を、鋭い刃物で刺した。


何回も、何回も。



『曼珠沙華は、血の色』



『人の血を吸って、曼珠沙華は、赤く染まるのよ』



狂ったあの人は、口癖の様に、言葉にする。



『葵は、良い子。

だから、良い物をあげるわ』



そう言って、私の右手に、血に染まった鋭い刃物を握らせた。

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