第50話
何度も、何度も、ドアを叩いた。
何度も、何度も、琥珀の名を呼んだ。
なのに、屋敷の中は、物音1つしない。
怪しく揺れるのは、蝋燭の火。
永遠さえも、幾つもあるドアから出て来ない。
1人残された感覚。
力無く、その場にへたり込む。
どうして、2人共居ないの?
その前に、どうして、蝋燭の火なの?
私が居る場所は、何処?
何気なく絨毯の上についた右手。
ヌメリとした感触に、一瞬、戸惑う。
何?
右手を目の前に持って来て、叫んだ。
「あぁぁぁー!」
叫んだつもりなのに、遠くに感じたのは、何故?
ガチャ!と音を立て、目の前にある両開きの片方が開いた。
「何故、此処に居る?」
蝋燭の火だけが灯る廊下。
感情のない言葉は、琥珀の声。
私の視線の先に、靴の先が見える。
「君は、何が知りたい?」
薄暗い廊下だからか、琥珀の感情のない言葉が、いつもより冷たく感じる。
だから、私の口から何も言葉も、出てこない。
「知りたい事があるなら言え」
視線を少しずつ、上へと上げる。
「どうして……?どうして……?どうして……?」
その先の言葉が出てこない。
私は、何を聞きたかったのかさえ、分からなくなるのは……どうして……?
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