第49話


目が覚め、ベッドから出て、気づいた。


丸いテーブルの上に、赤い刺繍糸がある事に。



今まで、こんな事は、1度もなかったはず……?



疑問符を浮かべた頭の中が、ズキズキと痛み始めた。


……違う。


ズキズキと痛むのは、頭ではなく、私の心だ。


何かが違う。


それが知りたくて、ドアの方に向かい、音がするくらいに、ドアを開けた。



「琥珀!」



足音のしない絨毯の上を、名前を呼びながら歩く。


2階から1階に下り、奥へと足を進める。



「琥珀!」



自分なりに大きな声を出したつもり。



『駄目!その先は駄目!』



私の中に居るもう1人の私が言った言葉。


今まで、屋敷中を歩いた事はない。


琥珀に止められていたから。


だけど、もう、待つだけは嫌。



「琥珀!」



1番奥の部屋。


重圧感のある両開きのドア。


ノブに手をかけて、鍵がロックされている事に気づいた。



ドン!ドン!ドン!



ドアを叩きながら『琥珀!』と名前を呼んだ。


普通なら、中に居れば気づくはず。


居ないはずはない。


だって、琥珀は、日が登る時は、外出しないから。



ドン!ドン!ドン!



「琥珀!」


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