第48話


夕飯が終わっても、まだ来ない琥珀。



何故……?



頭の中にある疑問符を、永遠に問うことはしなかった。


やはり、昨日とは、明らかに違う今日。


曼珠沙華の刺繍は、まだ、完成していない。


なのに、庭を埋め尽くす様に、曼珠沙華が咲いている。



死人花しびとばな


幽霊花ゆうれいばな


地獄花じごくばな


毒花どくばな


痺れるしびればな


天蓋花てんがいばな


狐乗の松明きつねのたいまつ


狐花きつねばな



全て、曼珠沙華の別名。


曼珠沙華と言う名前だけなら、綺麗な華だと思うのに、他の名前だと、不気味な華だと思うのは、私だけ……?



私にとって、琥珀と言う存在は、何なのだろう?


好きと言う気持ちだけでは、表せない様な気がする。


ただ、琥珀を恋しいと言う気持ちは、確かなもの。


『逃げよう』と言って、私の手を握ってくれた時から。


だけど、琥珀は、私とは違う。


そう思うのは、琥珀の言葉に、感情がないからかも知れない。



琥珀が、笑った顔を、見た事がない。


琥珀が、怒った顔も、見た事がない。



何に対しても、無関心。


だからこそ、惹かれるのかも……?


今日は、会えなくても、明日には会えるかも知れない。


お風呂に入ってから、その日は、静かに眠りについた。


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