第47話


「姫、琥珀からだ」



昼食を、部屋に持って来た永遠。


その言葉を聞いた私は、永遠から、3冊の小説を受け取る。



「赤い糸」



足りない刺繍用の糸を告げた私。



「琥珀に伝えておく」



サンドイッチと野菜ジュースを、丸いテーブルに置いた永遠は、そう言うと、部屋から出て行った。


部屋から出る事がないから、お腹が空かない。


それでも、少し口にして、残りをトイレに流した。


多分、琥珀は、刺繍用の糸を持って、私の部屋に来る。


それが、いつになるかは分からない。


だけど、必ず、来る。



ずっと、前から、そうだったから……



30分後に、食器を下げに来た永遠。



「残さずに食べたな」



小説を読む振りをして、返事をしない私。


何も疑う事なく、永遠は部屋から出て行った。


ベランダに出て、庭を眺める。


曼珠沙華。


毒がある華だと言われている。


赤く染まる華。


まるで、血の色。


振り返り、まだ完成していない刺繍を見る。


赤なのに、私が刺繍をしている曼珠沙華は、黒に近い赤。


綺麗な色じゃない。


私の瞳の色と同じ色。


どうして、その色なのか?私には分からない。


刺繍用の糸は、全て、琥珀が決めるから……



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