第46話


ベッドから出て、ベランダへと足を進める。


そして気づいた。


曼珠沙華が咲いている事に。


視線の先に、赤く染まる庭。


まるで、真っ赤な血の色みたいに見え、軽く目眩がした。


私は、覚えている。


目の前に広がる真っ赤な血の海を見た事がある。


忘れていたのではなく、忘れた振りをしていただけ。


私の名前は……葵。


幼い時、私の手を握ってくれたのは、琥珀。


だけど、琥珀は知らない。


私が、虐待を受けていた事を。


だから、あの人が、死んでくれて良かったと思った。


この先も、私は、琥珀を守る為に、何も覚えてない振りをする。


誰よりも、大切な人だから……

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