第23話


割れた窓ガラスの破片が、私の近くまで飛んできた。


それを、右手に取り、強く握る。


痛みと同時に、ポタポタと流れる落ちる私の血。




赤だ。


あの時の様に真っ赤だ。




「何、やってんだ?」



永遠の声が聞こえ、私は振り向きながら、ガラスの破片の先を首筋に当てた。



「姫!止めろ!落ち着け!」



そう叫ぶ永遠の声を、前にも聞いた事がある。


だけど、いつだったか、思い出せない。



「確実に死ぬなら、もう少し下だ」



後から、部屋に入って来た琥珀が、そう言った。



ガラスの破片を持った手を、少し下にずらし、振りかざした。


瞬時に、琥珀が動き、私の右手を握る。


力では、琥珀に勝てる訳がない。


だけど、このままでは、何も変わらない事くらい分かる。



「私は、人形じゃない!

一緒に暮らしているのに、会話もない!

そんな毎日なら、死んだ方がマシ!」



そう言った私は、また思い出した。


前にも、同じ様な事を言った事がある。



「永遠、止血」



私の言葉に対して、何も言わない琥珀。


そして、私の右手を後ろに捻った。


捻られた事で力が抜け、私の右手から落ちたガラスの破片。



「どうして、何も言ってくれないの?

私は、琥珀の何なの?

答えてよ……

ねぇ……琥珀……答えてよ……

お願いだから……」


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