第22話


ただ、自分の名前が知りたいと思った。


カゴの外に出れば、私の名前を知る人が居ると思えた。


なのに……結局、何も知る事が出来ないまま、カゴの中に戻された。



そんな気がするのは、私が間違っているから……?


でも、どうして、琥珀は私の居場所が分かったのだろう……?



考えれば、また、無限のループに迷い込んでしまう。



もし、考える事さえも放棄したなら、この先、どうなるのだろう……?


息をする事さえ、苦しく思うのは、琥珀のせい……?



行き場のない苛立ちが、込み上げてくる。


何も分かってないのは、私じゃなくて、琥珀の方。


全てを、破壊したい衝動に駆られ、点滴のスタンドを倒した。


分厚い絨毯が、敷かれているから、大きな音が出ない。


いつも、何かを言いかけて、その先の言葉を、口にしない琥珀。


私は、人形じゃない。


点滴の針を無理矢理抜くと、噴き出す様に真っ赤な血が流れる。


それが、何故か、快感だと思えた。


立ち上がり、食事の時に座る椅子を持ち上げ、思いっきり窓に向かって投げた。



ガシャーン!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る