第24話


何も言わない琥珀は、部屋を出て行く。



「会話をしないと言うより、会話する時間がないと言う方が正しい」



琥珀じゃなく、私の右手を握る永遠が言った言葉。



「琥珀は、あれでも絵本を描いている。

俺は、その助手。

自主出版だが、それなりに売れている。

その事は、姫も知っているはずなんだがな」



琥珀が、絵本を描いている?


永遠は、その助手?


その事を、私が知っている?



そんな疑問符を、頭に浮かべても、何も分からない。



「1つ聞かせて」


「何?」


「私の名前は?」


「悪いが、それは俺も知らない。

俺が、琥珀に出会った時には、傍に姫は居たからな」



永遠も、私の名前を知らないとは思っていなかった。



「もう1つ…「今日中に、終わらせないと駄目な絵がある」



私の言葉を、遮る様に永遠が言った。



「本当の事を知るのが、全てじゃない。

知らない方が、幸せな時もあると俺は思う」



私の右手を消毒して、テープを貼る永遠。


以前にも、こんな風に貼ってもらった事がある。


そう思うのに、何1つ思い出せない。



「後で、琥珀が抗生物質を持って来るから、大人しくしてろよ」



テープを貼った上から、綺麗に包帯を巻いてくれた永遠は、そう言うと部屋を出て行った。


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