第7話


キスが深くなる……



そう思った時、琥珀が私の唇から自分の唇を離した。



「君は、何も考えない方が良い」



優しい言葉だけど、私には冷たく感じる。


琥珀は、私の身体を抱き抱えたまま、足を進ませてから、私をベッドに寝かせた。



「そのままでは、風邪をひく。

早く、衣類を身につけた方が良い」



その言葉を残し、琥珀は部屋を出て行った。



琥珀の気持ちが分からない。


何故?キスをするのか分からない。



一緒に暮らしていても、琥珀との距離は、余りにも遠く感じる。



自分の中にある気持ちを、なんと呼べば良いのか分からない。


1人、取り残されたような感覚。


こうやって、考えても空回りするだけ。


起き上がり、ベッドから出た私は全裸のまま、クローゼットの扉を開け、中から下着と部屋着を取り出すと、それを身につけた。



今日は、何かをしようとは思わない。



クローゼットの扉を閉め、ベランダがある方に足を進める。


窓を開けずに景色を見る。


今は、庭には何も咲いていない。


そして、ずっと先には高い塀があるのが見える。


他には、何も見えない風景。


だから、1人取り残された気持ちが膨れるばかり……


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