【悲報】俺の平凡な日常、謎の転校生の一言で《終焉宣告》されました。

天照ラシスギ大御神

【悲報】俺の平凡な日常、謎の転校生の一言で《終焉宣告》されました。

 チャイムが鳴り響き、退屈な授業の終わりを告げる。

 俺、相田マコトは、机に突っ伏したまま大きく伸びをした。平凡な高校二年生。成績は中の下、運動神経もそこそこ。クラスでは空気のような存在だ。


 「あー、今日も平和だったなー」


 誰に言うでもなく呟き、鞄に教科書を詰め込む。友人A、友人Bと呼称できるような存在も、まあ、いるにはいるが、彼らはすでに部活へとダッシュしていった。


 教室に残っているのは俺と、あと数人。その中に、一際異彩を放つ人物がいた。

 転校生の九条レン。色素の薄い髪に、人形のように整った顔立ち。だが、その瞳はどこか人間離れした冷たさを湛えていて、いつもクラスから浮いていた。


 彼が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 え、俺? 何か用でもあるのだろうか。九条とは、転校してきてから一度もまともに話したことがない。


 「相田マコト、だったか」


 低い、よく通る声。なぜかフルネームで呼ばれ、俺は内心ドギマギする。


 「ああ、そうだけど……九条くん、何か?」


 九条は俺の目の前で立ち止まり、じっと俺の顔を見つめた。その視線に射貫かれそうで、思わず目を逸らしそうになる。


 「お前、時々、何かを"見てる"だろう?」


 その言葉に、俺は心臓が跳ね上がるのを感じた。

 見てる? 何を? いや、確かに俺には、時々、奇妙なものが見えることがあった。人には見えないはずのノイズのようなものや、空間の歪みのようなもの。

 ずっと気のせいだと思っていた。誰にも言ったことはない。この《エラー検知》とでも言うべき感覚のことは。


 「……何のことか、分からないな」


 動揺を悟られないように、平静を装って答える。だが、九条の目は誤魔化せないと告げているようだった。


 「誤魔化さなくていい。俺には分かる。お前は、俺たちと同じ《観測者》の素質がある」

 「観測者……?」


 聞いたことのない単語に、俺は眉をひそめる。

 九条はふっと息を吐くと、窓の外を指差した。そこには、いつもと変わらない街の風景が広がっている。


 「この世界は、お前が思っているほど"正常"じゃない。至る所に《バグ》や《エラー》が存在している。そして、それを修正し、世界の均衡を保つのが、俺たち《観測者》の役目だ」

 「……何かの冗談だよな?」


 俺は乾いた笑いを浮かべた。アニメや漫画じゃあるまいし、そんな非現実的な話、信じられるわけがない。


 だが、九条は真剣な表情を崩さない。

 「冗談なら良かったんだがな。残念ながら、これは現実だ。そして、この平和に見える学園こそが、今、最も危険な《特異点》になりつつある」


 九条の言葉は、まるで予言のように俺の胸に突き刺さった。

 特異点。その言葉を聞いた瞬間、俺の視界がぐにゃりと歪んだ。


 教室の壁に、今まで見えなかった黒い亀裂が走るのが見える。机や椅子が、まるでCGのポリゴンが崩れるかのように、カクカクとしたノイズを発している。

 「うわっ!?」


 思わず声を上げ、後ずさる。

 なんだ、これ。今までも時々ノイズは見えていたが、こんなにはっきりとした異常は初めてだ。


 「見えているようだな。それがお前の《エラー検知》能力の初期症状だ」

 九条は落ち着いた様子で言う。


 「エラー検知……?」

 「ああ。世界に発生する異常――《バグ》を誰よりも早く感知する力だ。お前が時折見ていたノイズや歪みは、その兆候だったんだ」


 俺は自分の手のひらを見つめた。こんな平凡な俺に、そんな特殊な力が?

 信じられない。だが、目の前で起きている現象は、紛れもない現実だった。


 「なぜ、この学園が……?」

 「それは、まだ分からない。だが、このまま放置すれば、この学園を中心に大規模な《世界崩壊》が起こる可能性がある」


 世界崩壊。その言葉の重みに、俺は息を呑んだ。

 平凡な日常が、音を立てて崩れていく。


 「どうすれば……俺に何ができるんだ?」

 俺の声は震えていた。


 九条は俺の肩に手を置いた。

 「一人では何もできない。だが、お前となら……あるいは」


 その時、教室のドアが勢いよく開いた。

 立っていたのは、生徒会長の橘アスカ先輩。才色兼備で、全校生徒の憧れの的だ。


 「九条くん、相田くん。こんなところで何を話しているのかしら?」

 アスカ先輩は、いつもと変わらない優しい笑顔を浮かべている。だが、その瞳の奥に、俺は今まで気づかなかった冷たい光を見た気がした。


 そして、俺の《エラー検知》能力が、アスカ先輩の周囲に、強烈なノイズと歪みを感知した。

 まさか……。


 九条が俺の耳元で囁く。

 「気をつけろ。彼女も、"こちら側"の人間だ。そして、おそらく――敵だ」


 平凡だった俺の日常は、この瞬間、完全に終わりを告げた。

 世界の裏側で繰り広げられる、禁断の異能バトル。

 俺は、この学園を、そして世界を守ることができるのだろうか。


 それから数日、俺は九条と共に行動し、学園内に潜む《バグ》の調査を始めた。

 九条によれば、アスカ先輩率いる生徒会は《リライター》と呼ばれる組織で、世界の法則を自分たちに都合よく書き換えようと画策しているらしい。

 そんな馬鹿な、と最初は思ったが、俺の《エラー検知》能力が感知する異常は、生徒会室の周辺で特に強かった。


 「なあ九条、俺たちだけで、本当にあんな連中と戦えるのか?」

 放課後の旧校舎。俺たちの秘密基地と化したそこで、俺は不安を口にした。


 「お前の《エラー検知》能力は強力な武器だ。敵の攻撃パターンや弱点さえ見抜ける可能性がある。俺は戦闘でそれをサポートする」

 九条は淡々と答えるが、その目には確かな信頼が宿っていた。


 ある時、俺たちは生徒会のメンバー数人に囲まれた。

 「嗅ぎ回るネズミは駆除しないとな」

 一人が不気味に笑い、その手には炎が宿っていた。


 絶体絶命かと思ったその時、俺の頭の中に、相手の攻撃軌道と、わずかな隙間が映像として流れ込んできた。

 「九条、右だ! 三秒後、足元!」


 俺の叫びと同時に、九条は風のように動き、相手の炎をかわし、逆に体勢を崩させた。

 「やるじゃないか、マコト」

 「お、おう……!」


 これが、俺の力の使い方なのか。

 その後も何度か危機はあったが、俺の《エラー検知》と九条の戦闘力で、なんとか切り抜けていった。

 その過程で、俺の能力は単に危険を察知するだけでなく、ごく稀に、小さな《バグ》を一時的に修正するような現象――九条はそれを《デバッグ》と呼んだ――を起こすことがあった。


 そんな中、九条から衝撃的な事実が告げられた。

 「お前の両親も、かつては《観測者》だった。だが、お前が幼い頃、ある事件に巻き込まれ……お前を守るために、その記憶と能力を封印したらしい」


 嘘から出た真実。俺の平凡だと思っていた過去は、実は作られたものだったのだ。

 「どうして……それを俺に……」

 「いずれ知るべきことだと思ったからだ。そして、アスカも……彼女も元は、世界を守ろうとしていた。だが、ある悲劇が彼女を変えてしまった」


 アスカ先輩にも、何か辛い過去があるというのか。

 俺たちの戦いは、ただの敵対組織との抗争ではないのかもしれない。


 そして、ついに決戦の時が来た。

 学園の地下深くに隠された巨大な空洞。そこに《リライター》の本拠地があった。

 アスカ先輩が、禍々しいオーラを放つクリスタルを手に、何かの儀式を行おうとしていた。


 「これで、私の望む世界が……! 誰も悲しまない、完璧な世界が生まれるのよ!」

 アスカ先輩の狂気に満ちた声が響く。

 周囲には、生徒会のメンバーたちが布陣し、俺と九条の行く手を阻む。


 「ここまでだ、相田マコト。お前のような落ちこぼれに、私たちの理想を邪魔されてたまるか!」

 生徒会役員の一人が、炎を纏った剣を構えて襲いかかってきた。


 「九条!」

 「分かっている!」


 九条が風を操り、炎の剣を防ぐ。その隙に、俺は祭壇へと向かう。

 アスカ先輩の周囲に発生している《バグ》は、今まで見たこともないほど強大だ。

 これを修正しなければ、本当に《世界崩壊》が起きてしまう。


 「させるか!」

 別の役員が氷の槍を放つ。


 だが、その氷の槍は俺に届く前に、空中で霧散した。

 「なっ!?」


 俺は自分の手を見つめる。無意識だった。だが、確かに俺が、あの攻撃を"修正"したのだ。

 《デバッグ》能力。それが完全に覚醒した瞬間だった。


 「すごいじゃないか、マコト」

 九条が少し驚いたように言った。その声に、周囲の生徒会メンバーも「まさか、あの落ちこぼれが……?」「ありえない、こんな力……」とざわめいている。


 「ああ……やるしかないんだ!」

 俺はアスカ先輩に向かって叫んだ。


 「アスカ先輩! あなたがやろうとしていることは間違っている! それは本当の救いじゃない!」


 アスカ先輩は俺を一瞥し、嘲るように笑った。

 「落ちこぼれに何が分かる! あなたに、私の絶望が分かるものか!」


 アスカ先輩がクリスタルを掲げると、祭壇から黒い奔流が溢れ出し、世界を飲み込もうとする。

 まずい、間に合わない――!


 その時、俺の脳裏に、両親の優しい笑顔が浮かんだ。

 守りたい。この日常を、仲間たちを、そして、かつて優しかったアスカ先輩の心を。

 「あの時のように、大切なものを失ってたまるか!」俺は自分を鼓舞する。


 「うおおおおおおっ!」

 俺は両手を突き出し、全身全霊で《デバッグ》能力を発動した。


 視界が真っ白に染まる。

 世界の法則が、俺の意思に応えようとしている。

 だが、アスカ先輩の歪んだ願いもまた、強大な力を持っていた。


 せめぎ合う二つの力。

 俺の意識が遠のきかける。「頑張れ、マコト!」「お前ならできる!」どこかから仲間たちの声が聞こえる気がした。負けるわけにはいかないんだ……!


 「……お前は、何も分かっていない!」

 アスカ先輩の悲痛な叫びが響く。彼女の瞳からは涙が溢れていた。


 俺は、彼女の心の奥底にある深い悲しみと孤独を感じ取っていた。

 彼女もまた、この歪んだ世界システムの被害者だったのかもしれない。

 「先輩……あなたの苦しみは、俺には本当の意味では分からないかもしれない。でも、世界を壊して得られる幸せなんて、きっとないですよ!」


 俺の言葉は、彼女の心に届いたのだろうか。

 一瞬、アスカ先輩の力が揺らいだ。

 その隙を、俺は見逃さなかった。


 「今だ!《システム・リブート》!」

 俺は、最後の力を振り絞り、最大の《デバッグ》を発動した。


 眩い光が全てを包み込む。

 世界の《バグ》が修正され、歪みが正常に戻っていく感覚。

 同時に、俺の意識は闇へと沈んでいった――。


 気がつくと、俺は保健室のベッドの上にいた。

 隣には、心配そうな顔をした九条がいた。


 「……九条。世界は……?」

 「ああ。お前のおかげで、元に戻ったよ。ありがとう、マコト」


 九条が珍しく、優しい笑みを浮かべていた。

 アスカ先輩と生徒会のメンバーは、あの後、学園長――実は《観測者》組織の幹部だった――によって保護されたらしい。

 彼女たちの記憶は修正され、普通の生徒としてやり直すことになると。「あの事件は、君の活躍のおかげで最小限の被害で済んだ」と学園長は言っていたそうだ。


 「これで、俺の役目も終わりか……」

 少し寂しい気もしたが、平凡な日常が戻ってくるなら、それが一番だ。


 だが、九条は首を横に振った。

 「いや、始まりだよ、マコト。世界には、まだ無数の《バグ》が存在する。お前の力が必要だ」


 俺の平凡だった日常は、もう戻らないのかもしれない。

 でも、なぜか不思議と、嫌な気はしなかった。「君のような人材は貴重だ。これからも協力してほしい」という声が、他の《観測者》からも聞こえてくる。


 「ああ、分かってる。俺の《エラー検知》は、まだ始まったばかりだからな!」

 俺は九条に向かって、ニッと笑った。


 窓の外には、いつもと変わらない、しかしどこか輝いて見える青空が広がっていた。

 俺の、新たな日常が始まる。世界の裏側で、人知れず戦い続ける、秘密のヒーローとして。




最後まで読んでくれてありがとう!

面白かったら❤いいね!、★★★★★評価、そして感想コメントでマコトや九条への応援メッセージをくれると、作者が世界のバグを修正するモチベーションが爆上がりします!

「もしあなたが《エラー検知》能力に目覚めたら、最初に何をしたいですか?」

ぜひコメントで教えてね! フォローもよろしく! 次の戦いを見逃すな!

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