こんなビジネス書も大好きである 稲森和夫著「生き方」

Kojiro

第1話 全編

「生き方」       稲盛和夫著


 言わずと知れたあの稲盛和夫氏の著作である。

 もう出版されて何年も経つが、今も読まれ続けている。


 この本は、僕がベトナムに来る時に、僕の師匠であり同僚である宮地さんから頂いたものである。


 本人のキャラクターとは裏腹に、透明のセロファンに包まれて、ピンクのリボンがついているのに驚いた。

「どういう趣味なのだろう」と思ったが、とても嬉しかった。


 仕事を続けてきて、責任のある立場についてからは、それまで続けてきた読書を離れ、ビジネス書を読むようになっていた。


 仕事に悩んでいたこともあり、手当り次第に読んでいた。松下幸之助氏や本田総一郎氏、ソニーの盛田氏や孫さん。宅急便の小倉氏にも感動させられた。宅急便は、社長以外の全員が反対だったと書かれていた。


 本当にどれもが感動的で、胸が熱くなった。


 それまでは小説が好きであった。人間の深部のエゴをえぐりだすような心理小説、灰色の都市の無機質の中に潜む虚無感ややりきれなさ。

 それに比べたら、胸のすくような情熱にあふれ、夢と希望が湧いてきた。


 人生をななめ45度から見て、何も期待せず、ニヒリズムの中で暮らしていた人間が、ある日突如としてチャレンジ精神あふれる夢を見るようになったのだから、不思議なものである。


 稲盛氏の著作も数冊は読んだ。アメーバ手法も勉強させて頂いた。これはとても具体的で、勉強になった。


 稲盛氏も挫折の連続のようなお方で、とても苦労をされて来ておられる。著作を読むと宗教家のように読めるのかも知れないが、僕にとっては具体的でとてもわかりやすかった。ありがたい先生である。


 結局のところビジネス書は、仕事をしている人達のこの生き方をあらわしたものが多かった。それも情熱をかたむけ、熱いハートを持ち、夢と希望にあふれてチャレンジを繰り返す。ビジネスに情熱を傾け、皆の生活を豊かにする。単なるお金儲けではない。


 彼らは出世の為のうまいやり方や姑息な生き方は考えていない。人生に果敢に立ち向かい、自分の夢を追求していこうとする。ある意味、極地や山稜をめざす冒険者のようである。


 現代文学が現代人に潜む虚無を解き明かしたところで、何が変わっていくのだろうか。


 もっと希望の持てる建設的な議論が必要なのではなかろうか、とそんな風にも思う。ビジネス書の中の夢を聞く方がずっと楽しいと思ったものである。


「生き方」はそんな本であった。


 仕事で悩む稲盛氏が、かつて松下幸之助氏の講演を聞きに行ったことがある。経営にはダム式経営が必要ですと語る松下氏。


 あまた居る社長達みんなが、その通りとあいづちをうつ。では、どうすれば良いのですか?と質問が飛ぶ。長い沈黙があって、松下氏は応える。


 それがわかりませんのや。まず、ずっとそうなりたいと思うことですな、と応えて皆をがっかりさせている。


 しかし、そこに一人だけ「なるほど。その通りだ」と強い衝撃を受けた人間がいる。

 魂が呼応するというのか、それを理解できる資質を持った人物。


 それを聞いて衝撃を受けた人こそが、稲盛氏だったのである。有名な話であり、本当に感動的なエピソウードである。


 いつも苦しんで考え続け、そしてチャレンジする。ビジネスも生き方も全て同じなのだろう。そういう真摯な生き方は、我々を感動させずにはおかない。


 日本に居てもベトナムに居ても同じだろうと思う。僕は自分にウソをつかず、自分の働く職場をみんなが喜んで働ける場にしたいと思っている。そして、お客様が喜んで貰えるような商品やサービスを提供していくことが大切であろうと思う。


 我々は、全員で、いつもそれについて考え、そして毎日それに向けてチャレンジをしていきたい。私には力は無いかもしれないが、持てる力を全て注ぎ込みたいと思う。


 それこそが我々の夢であり希望である。そして我々はそこに生きがいを見つけ出すのだろうと思う。それこそが我々に課された「生き方」なのだと思わずにはいられない。




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