【扱いやすい男達】双神、出番なし

「ディア、怪我はしていませんか?」



人型になったガルダが後ろからディアを抱き締める。



「するわけないでしょ。それより連行しなくちゃ。」



「そうですね。ところで……彼らの動機がいまいち分からないんですが。」



「んー……一言で言うと、愛するが故の犯行?」



首を傾げるガルダ。

笑ってディアが説明する。



「昔ね、過激な動物愛護団体がいたの。捕鯨船に直接攻撃する様は海賊みたいだったらしいわ。」



「海賊ですか。彼らとどんな関係が?」



「真似したかどうかは分からないけど、馬を想う余りの過激な犯行ってところね。」



過激な愛護団体と捕鯨船。

動物愛好会と馬車マラソン。

ディアが心配していた馬の怪我と安楽死。



「なるほど。馬を守る為に妨害したんですね?」



「そういう事。気持ちは分かるけど、怪我人を出しちゃったら……ね。」



それはもはや犯罪でしかないのだ。



「あ、そうだ。おばあちゃんに報告しとこ。やっぱり関係があったしね~。」



ピシャリと否定された『馬の怪我と安楽死』。

それが妨害の動機だったのだからと、勝ち誇った気分で連絡を取った。



「で?この6人が犯人なの?」



連絡するや否や現れたシルビア。



「うん。動物愛好会のサークル仲間なんだって。」



「そっか。気持ちは分かるけど犯罪は犯罪だし……仕方ないわね。」



良くやったと褒められ、へへっと笑うディア。



「おばあちゃん、こいつら警察に突き出すの?」



「んー……運良く死人は出ていないし……被害者も軽傷だし……」



ぽんと手を打つ。



「FLAGで更生させよっか。精神と肉体を鍛えてやるわ。」



「あは、いい考え。本人達にとっては刑務所より厳しいかも知れないわね。」



神と女神による更生だ。

まともになって当然だろう。



「じゃあFLAGに連行するわ。ほら、起きなさい、」



ペチペチと頬を叩き、覚醒を促す。

目覚めた男がシルビアの顔を見て目を見開いた。



「うわあっ、た、戦いの女神だ!退治される!」



犯罪者となった自分達を退治しに来たと思ったらしい。

その叫び声で他の5人も覚醒した。



「退治なんかしないわよ?貴方達が魔族なら話は別だけど。」



「に、人間!俺達人間だから!」



ビクビクしながら身を寄せ合う6人。

シルビアが仁王立ちで通告する。



「罪を犯した貴方達には罰を受けてもらう。」



「ば、罰って……?」



「FLAGで1ヶ月鍛錬する事。神と女神が直々に鍛えてあげるわ。」



FLAGでの鍛錬……。

神と女神が直々に……?



「く、苦行とかするのか……?」



「そうね~……精神修行には苦行が良いかも。肉体修行には格闘の実践稽古とか?」



嫌だと叫ぶ男達。

考えただけでゾッとする。



「そんなに嫌?FLAGには神々の乗り物達も居るんだけど。」



乗り物と聞き、目を輝かせる。



「白虎……?」



「ええ。黒豹もね。」



「も、もしかしてガルダも!?」



その台詞にきょとんとするディア。



「ガルダならずっとここに居たけど?」



えっ!?と振り向く男達。

ディアの隣に立つ男が頬を掻いていた。



「まさかあのオウギワシって……」



「はは、私です……。」



キャーッと歓喜の声を上げる6人。

その騒ぎっぷりに肩をすくめるシルビア。



「扱いやすい子達ね~。飴と鞭の飴は動物でいいんだもの。」



そんなこんなで話はまとまり、6人はFLAGへと連行されて行った。


ディアはそのまま残り、コンパニオンのアルバイトを続ける。

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