【双神と蜂蜜】

「菩提樹ですか?でも少し味が違いますね。」



「あ、アメリカボダイジュなんですよ。ここはアメリカですから。」



「なるほど。インドの菩提樹とは違うわけですね。」



シャスタに話題を取られ、頬を膨らます少女。

更なるチャンスをうかがい、会話を盗み聞く。



「実はその蜂蜜の事でお願いがあるんですが……。」



「お願いですか?私達に出来る事なら力になりますよ。」



「では……これに蜂蜜を戴けますか?」



恥ずかしそうに瓶を差し出すシャスタに、笑って了承するアシュヴィン双神。



「アシュヴィン双神ってはちみつが出せるの!?」



「ええ。これで人々に滋養を与えるんです。」



そう言って取り出したのは鞭だった。



「ムチなのに武器じゃないの?」



「これは馬鞭ですよ。私達は御者でもありますから。」



「そっか。わあ、綺麗な色~。」



鞭から滴り落ちる蜂蜜は綺麗な琥珀色をしていた。



「食べてみますか?」



大きく頷いたセフィーナが蜂蜜を口に含み、その美味しさに目を見開いた。



「美味しいでしょ?だから分けて戴いてるんですよ。」



セフィーナの反応にシャスタが微笑んでいた。



「私も欲しい!クマ取って来る!」



パタパタと屋敷の中に駆けて行くセフィーナ。

それを見送り、双神がシャスタに尋ねる。



「セフィーナちゃん、蜂蜜が欲しくて私達の所に居たんですか?」



「違いますよ。あの子、お二人に憧れているんです。」



「私達に?」



「ええ、天界の医師に。お二人のような医師になりたいそうですよ。」



聞いた二人が笑顔を見せる。

目標とされた事がよほど嬉しかったのだろう。


そこへセフィーナが戻って来た。

たくさんの空容器を抱えて……。



「うわ、そんなにため込んでいたんですか?」



「だって可愛いんだもん。」



「で?それ全部に戴くんですか?」



全部と言われ、改めてその数を見れば……10個以上。



「貰いすぎ……?」



さすがに多すぎると自分でも思ったのか、おずおずと双神に尋ねた。



「大丈夫ですよ。蜂蜜にはいろんな使い道がありますから、多すぎるなんて事はありません。」



「ジヨウってやつ?」



「そうですね。でもそれだけじゃなく、治療にも使えるんです。」



治療と聞いて目を輝かせる。

天界の医師から教えを貰うチャンスだ。

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