第3話

時はあっという間に流れ、気付けば夏休み前日となった。

いつもより教室の熱気を感じる中、誠司君は私に話しかけた。

「そういえば、連絡先持ってなかったよね。」

「ああ。そうだったね。アドレス交換しよっか。」

すっかり忘れていた。時間も何も考えていないのに、連絡先が分からなければ何も出来ないではないか。

「…はい、ありがとう。」

この沈黙が耐えきれなくなった私は話を振った。

「…お祭り、楽しみだね。」

「ああ。そうだね。俺、この祭は毎年参加しているんだ。」

「そうなんだ。まぁ夏といえば祭り!って感じするもんね。」

「それにこの辺は伊佐咲しかないし、そこまで小さい祭でもないから人も来るよね。」

「そうそう。それに…今年の祭は重要だから…」

「ああ、新しい伊佐咲の乙女が祀られるのか。」

一瞬、誠司君の顔が暗くなったような、悲しいような顔をした。

「そう。それが結構大事な話でね。」

「そうなんだ。大事というと?」

「…祭の日、全て教える。」

「…わかった。じゃあそろそろ完全下校時間だし、帰ろうか。」

「暇だったらメールでも送って。」

「うん。」


「じゃあ。また祭の日に。」


誠司君が教室から出ると、またすぐにドアが開いた。

「夏海!一緒に帰ろ〜!」

「美咲!準備終わってないからちょっとまってて!」

「…よし。こんなもんかな。」

私は教室を飛び出した。

「お待たせ!帰ろっか」

しばらく数学教師の愚痴やクラスメイトの話で盛り上がり、もうすぐ家に着くというところで、美咲は突然思い出したかのように言った。

「そうだ!今日は君の好きぴの誠司君と話せた?」

「好きぴって…アドレス交換できたよ。」

「あれ交換してなかったの?」

「そりゃしっかり話したのもほぼ初めてだし…」

「そっかそっか!」

「それと美咲、なんだか誠司君、お祭りの乙女の話したら一瞬顔が暗くなった気がしたの。楽しみだね、って行ったらそうだねって言ってくれたけど、やっぱり行きたくないのかな…」

「ふーん。あの人表情に出るようなタイプじゃないよね。他に理由ありそうとかないの?」

「…うーん。あ、祭当日、伊佐咲の乙女の大事な話をしてくれるって言ってた。」

「なにそれ。じゃあ伊佐咲関係でなにかあるのかもね。」

「うん…それは当日にしか分からないから…」

「…本当はもっと話したいけど…じゃあそろそろ家だから!またね!進展あったらすぐメールしてね!楽しい夏休みを!」

「そっちもね!またね〜!」

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