第15話 健全、いたって健全です

☆☆☆


「じゃあそこまで言うなら、先輩のパンツ見せてみてくださいよ!恥ずかしくないんでしょ!?見せられたら、アルバムでもなんでも見せたりますよ!」


これである。男である俺が、女性である咲月先輩に向けて、放った言葉がこれである。


大セクハラ発言過ぎた。言い終わってから、「何を言ってるんだ俺は!?」と心の中で叫んだ。


すぐさま取り消さないと、俺の高校生活が、今後の人生が大変なことになりかねない!


「え、いいの?アルバムでもなんでも見せてくれるって、言ったね?」


「あ、いや今のは―」


「よーし分かった、おかのした!やっぱり君も男の子だねえ。パンツ見たいなら最初からそう言ってくれれば早かったのに。」


「待って!?ちょっと待って!?」


だめだ、止めるの失敗した!ここはひとつ、実先輩に助言を―


「―ってあれいない!?実先輩!?」


「散歩してくるってさ。」


「くっそ、逃げたな......!」


俺は回らない頭をフル回転させ、思考を巡らせる。何とかして止めさせないと、また弱みを握られることにもなりかねない!!


「はーいそれじゃあご注目ー」


「ひぇっ!?」


何とかして逃げてやろうと模索していたところ、いつの間にか目の前に咲月先輩がいた。 びっくりした衝撃で腰が抜けてしまったようで、立ち上がることが出来ない。あとずさりするが、距離を詰められるだけだった。


先輩はニヤニヤしながら、スカートに手をかける。


「や、やめてください先輩っ!シャレになりませんからっ!!」


俺は最後の抵抗として、ぎゅっと目を瞑った。こうする他、出来ることがなかった。


.....目を瞑ってから、どれくらい経っただろうか。体感的には1分以上だが、本当のところは定かではない。


俺はてっきり、瞑った目をこじ開けてくると思っていたため、それが一向にないことが不思議だった。いや、セクハラかましてくる先輩も、目を瞑ってる人をこじ開けてくる先輩も、訳わかんないけどね?


俺は予想が外れたために、様子を知りたいという好奇心に負け、覚悟を決めて目を開けた。見えてしまった時は、とりあえず土下座で謝ろう。それしかない。


.....が、決めた覚悟とは裏腹に、目の前に広がっていたのは、目を閉じる前と同じ光景だった。スカートに手をかけながら、咲月先輩は固まっていた。顔を赤くし、じっと下を向いている。


「.....き、今日はこのくらいで許してやろうじゃないか、うん。」


顔を赤くしながら、そういって先輩は俺に背を向けた。よかった、先輩も流石にそこまでは落ちぶれていなかったらしい。見られたら恥ずかしいという常識が、まだ彼女の中になってよかった。


俺はホッと胸を撫で下ろす。


「そうですか、ならよかった。じゃあアルバム返せ。」


「それとこれとは話が別だね。とりあえずこれは部室に保管する。」


「なんで!?」


だが、結局はこれだった。いやさっさと返せよ!


「よっと、アルバムは見れた?」


「失敗した」


「あれ、そうなんだ。じゃあこの続きは明日だね。」


「やなこった、さっさと返してください。というか実先輩、あんたなんで逃げた。」


「えぇ?御手洗行ってただけだよぉ。」


「えぇー?ほんとでござるかぁ?」


「さぁね。とりあえず帰ろ!」


最終的に、俺はこの日、アルバムを取り返すことが出来なかった。結局これである。


☆☆☆

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