第14話 アルバムを巡る争い

☆☆☆


放課後。


「ほれほれ、これが欲しいだろう?どうしよっかな、見ちゃおうかな~」


「やめてくれぇ......後生、後生だからぁ......」


「ふふん。なら、『渉くんアルバム①-赤ちゃん~幼稚園編-』を出しな。」


「勝手に変な名前つけんな、人のアルバムに!!いいからそれを返してくださいよお!」


「ダメだよ渉くん、交渉は交換材料がなきゃ。こういうのはギブ&テイクって相場が決まってるんだよ?」


「どっちも俺のだよ!?ギブ&テイクじゃなくて差し押さえさせろって言ってるのがお分かりで!?」


部室に来るなり、俺は両手両足を椅子に縛り付けられた。カバンをとられ、中をすべて出されたが、お目当てのものはなかったらしく、そのまま尋問が始まり、今に至る。


咲月先輩の手には、後で見ようといっていた、小学校から今現在までの写真が入ったアルバムが握られている。俺は先輩2人から尋問を受けながら、何とかしてアルバムを取り返そうと模索していた。


ちなみに、朝見ていたアルバムは、俺が回収した後に教室のロッカーに封印した。2重に鍵をつけて、荷物を全部漁らないと見つけられないように、カモフラージュまで施した。これで万事OKだわ。


「ふん、いいもんね。そこまで意地を張るなら、勝手にこれ見ちゃうから。」


「くっ......卑怯な......!」


「いやなら早く出そうね、幼少期のアルバム。ね?ね?ほーら、出しちゃえ♡」


「実先輩それアウト!耳元で囁くんじゃねえ!」


ASMRってやつか、これが!なんかぞわぞわする!鳥肌立ってくる!この人、自分の声がいいことを知ってやってやがるっ......!実先輩、恐ろしい子......!


「もう、何が不満なのさ。別にいいじゃない、アルバム見るくらい。」


「いやなものはいやなの!恥ずかしいんですよそういうの!!」


「え~?恥ずかしいかぁ?」


「恥ずかしいんです俺にとっては!例えるならパンツみられるくらいには!」


黒歴史、それは絶対に見られたくないものです。小学生はまだしも、中学生1年~2年の俺は、中二病真っただ中だったわけで。もうお分かりですね?そういうことです。ね?パンツみられるくらい、何ならそれ以上に恥ずかしいでしょ?


「え、パンツくらい普通に見せられるけど?」


「うっそだろ、そこの感覚までバグってるのかよこの人!!」


「む、失敬な。私は〇女ではないぞ。」


「誰もそこまで言ってねえよ!?ああもう―」


ああ言えばこう言う、押し問答に引け問答......一向に進展のない尋問に、俺はいい加減嫌気がさしてしまった。早く終わらせたいと、そう思ってしまったがあまり。


俺は、馬鹿なことを言ってしまうのだった。その内容が、これである。


☆☆☆

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