第16話 アルバム持ち出し事件の真相

☆☆☆


「もういいでしょう?そろそろ返してくださいって~」


「まだまだ。今3週目でいいところだから。」


「人のアルバム3週目とか、わけわかんねえよ。」


「じゃあさじゃあさ、これは見るのやめるから、幼少期のほうもっかい見せてよ。」


「あれはもう家に持ち帰りましたんで、ここにはないっす。」


「ぶー、ケチ。」


「ケチって......」


次の日、俺はあきらめて、先輩2人にアルバムを見る許可を出した。あの時の2人の子犬のようなつぶらな瞳は、一生忘れないだろう。


いい加減めんどくさかったのもあるが、大きな理由は他にある。昨日の夜、母親をとっ捕まえて、人のアルバムを勝手に渡した理由を聞いてみた。その返事が意外なものだったからだ。


「ああ、あのアルバム?実はね、あの2人がゴミ出しとお洗濯、料理まで手伝ってくれてね。そのご褒美に何かあげようとしたら、『渉くんのアルバムが見たいので、借りさせてください!』って言ってたのよ。」


これが理由だった。なら最初からそういってほしかったのだが、俺はまたしても2人に遊ばれていたらしい。


母さんを助けてくれたお礼として渡されたものなら、1回くらいはいいか、と判断したため、許可を出したのだ。そしたら1回どころか3周目という始末。許可を出したことを後悔しかけていた。


「そんなん見てて何が楽しいんだか......はあ。俺にはわかりませんよ。」


「まあ本人はわからないかもね。」


「こっちは超楽しいけどね~?」


アルバムを眺めてにやにやしている先輩2人と、それを頬杖をつきながら眺めている俺。......俺が描いていた華やかな学校生活は、一体いつになったら訪れるのやら。


え?部活に入って、かわいい先輩2人と一緒とか、十分華やかだろうって?おいおい、冗談はよしこちゃんだぜ。ちゃんとこの景色見れてるか?その血涙拭いて、耳の穴かっぽじって、目ぇ見開いてみろよ。


「ぐふっ......うほほっ、これはこれは」


「うへへへへへ」


朝っぱらから人のアルバムみて、涎垂らしてぐへぐへ言ってるような連中だぜ?どれだけ顔がよかろうと、これは引かざるを得んだろ。距離を取りたくもなるだろ。これでもうらやましいとか言えるやつは......まあなんだ、人生楽しそうで何よりだ。


ふと時計を見ると、もうすぐでHRが始まる時間だった。俺は教室がここから離れてるし、そろそろ出ないとまずい。2人はまだぐへぐへしてるが......ええか、ほっとこ。先輩たちのことだ、何とかなるだろ。なんなかったとしても、それはそれでメシウマだし。


俺はカバンを持ち、軽く会釈をして、教室へと急ぐのだった。


☆☆☆

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