第16話 アルバム持ち出し事件の真相
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「もういいでしょう?そろそろ返してくださいって~」
「まだまだ。今3週目でいいところだから。」
「人のアルバム3週目とか、わけわかんねえよ。」
「じゃあさじゃあさ、これは見るのやめるから、幼少期のほうもっかい見せてよ。」
「あれはもう家に持ち帰りましたんで、ここにはないっす。」
「ぶー、ケチ。」
「ケチって......」
次の日、俺はあきらめて、先輩2人にアルバムを見る許可を出した。あの時の2人の子犬のようなつぶらな瞳は、一生忘れないだろう。
いい加減めんどくさかったのもあるが、大きな理由は他にある。昨日の夜、母親をとっ捕まえて、人のアルバムを勝手に渡した理由を聞いてみた。その返事が意外なものだったからだ。
「ああ、あのアルバム?実はね、あの2人がゴミ出しとお洗濯、料理まで手伝ってくれてね。そのご褒美に何かあげようとしたら、『渉くんのアルバムが見たいので、借りさせてください!』って言ってたのよ。」
これが理由だった。なら最初からそういってほしかったのだが、俺はまたしても2人に遊ばれていたらしい。
母さんを助けてくれたお礼として渡されたものなら、1回くらいはいいか、と判断したため、許可を出したのだ。そしたら1回どころか3周目という始末。許可を出したことを後悔しかけていた。
「そんなん見てて何が楽しいんだか......はあ。俺にはわかりませんよ。」
「まあ本人はわからないかもね。」
「こっちは超楽しいけどね~?」
アルバムを眺めてにやにやしている先輩2人と、それを頬杖をつきながら眺めている俺。......俺が描いていた華やかな学校生活は、一体いつになったら訪れるのやら。
え?部活に入って、かわいい先輩2人と一緒とか、十分華やかだろうって?おいおい、冗談はよしこちゃんだぜ。ちゃんとこの景色見れてるか?その血涙拭いて、耳の穴かっぽじって、目ぇ見開いてみろよ。
「ぐふっ......うほほっ、これはこれは」
「うへへへへへ」
朝っぱらから人のアルバムみて、涎垂らしてぐへぐへ言ってるような連中だぜ?どれだけ顔がよかろうと、これは引かざるを得んだろ。距離を取りたくもなるだろ。これでもうらやましいとか言えるやつは......まあなんだ、人生楽しそうで何よりだ。
ふと時計を見ると、もうすぐでHRが始まる時間だった。俺は教室がここから離れてるし、そろそろ出ないとまずい。2人はまだぐへぐへしてるが......ええか、ほっとこ。先輩たちのことだ、何とかなるだろ。なんなかったとしても、それはそれでメシウマだし。
俺はカバンを持ち、軽く会釈をして、教室へと急ぐのだった。
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