二話 龍山家1

─『龍英城りゅうえいじょう 将軍の間』─


四種通よんしゅどうりの街道半壊、撃龍軍げきりゅうぐんなる族を鎮圧するも全員が重傷。特に主犯格のリーダーは内臓に損傷は見られないが胸郭の損傷が激しいと……。はぁ〜我が娘ながら毎回毎回良くやるね〜」


報告書を読みながら、目の前に座る娘 青蘭せいらを見つめながら話しているのは、龍英りゅうえいの将軍でもあり青蘭の父 龍山りゅうせん 泰青たいせいである。

長い紫黒色の髪に青蘭の倍はあると思われる琥珀色の角。紺色の着物と黒の羽織を身に纏っている。羽織の背の方には『龍』の一文字が書かれている。

そんな父に対して事件を起こしたせいら


「あははっ、ごめんなさいパパ」


正座をして反省しているものの笑顔で答える


「姉上、少しは立場を気にしていたほうが良いと思います」


「う〜んでも姉さんはがいが危なかったから、族を倒したんでしょ?問題ないんじゃないのかな」


青蘭の座っている右側には濃青紫髪で眼鏡をかけてしっかり蘭服を纏うと龍人と緩めパーマで濃赤紫色の髪の毛にちょっとばかし着崩した蘭服姿の龍人がいた。

眼鏡の方は第二将だいにしょう 龍山 涼介ひょうすけ、緩めパーマの方は第三将だいさんしょう 龍山 理人りひとの双子の兄弟がいた。


「にしてもだ。街道の半壊と族が全員重傷はさすがにやり過ぎだ」


「でも ひょうくん、お姉ちゃん加減したんだよ?」


「いや明らかに報告書の内容を見る限り、姉上が『咆哮ほうこう』を撃ったのは明らかです。姉上の咆哮は加減なんてと思います」


涼介の言葉に口を尖らせる青蘭


「姉さんの咆哮、まじでやばいよね〜。僕でも完全に治るまで半星はんせいかかったもん」

※半星=半月


「あのときはごめんねりっくん」


「いやいや、あの時は僕も姉さんの本気を受けてみたくってさ」


と昔話をしているなか


「そうなると族から情報を得るのも、時間がかかるのか……。族の所持品から何か手がかりがあれば良いのだが……」


将軍である泰青は反乱の真相を探りたかったのだが、族は全員治療中で会話ができない状態だった。しかも反乱は今日起こったのが初めてではなく、これまでにも数十回もの反乱が起きていた。


「青蘭が加減できていれば族から話が聞けたのに………」


「それは……本当にごめんなさい」


そしてその数十回の反乱を止めたと言うより居合わせて一発で沈静化させて全員医療院送りにした 青蘭。反乱を起こした者たちはまだ医療院におり、会話ができない状態でもある。


「反乱を起こした者たちは医療院から出られるほど回復しきっていないからな」


龍国では『民の命』が第一なので、しっかりと万全の状態にしてから事件の情報を得るようにしている。過去に事件の真相を得ようと医療院で取り調べをしたところ、体内に仕込んでいた毒で自害したものもいた。そう言うことがないよう医療院で体を隅々まで検査をし、情報を得られる状態にしなくてはならないため、現状反乱が起きた理由が分かっていなかった。


「そのことですが、父上。旋牙せんが隊長が族の所持品から奇妙なものが出てきたと報告がありました」


「そうか……後で龍守隊に顔を出すとしよう。とりあえずこの事件の話はこれでおしまいにするとして。………青蘭」


泰青はせいらの名前を呼ぶと先程までは柔らかかった表情から少しばかり真剣な表情に変わった。表情が変わったことに気づいた青蘭は少し驚いて答えた。


「は、はい」


「民のためにやったとはいえ、危ないことはしないでくれ」


「でもあたし強いから……」


「お前が強いのはここに居る全員知ってる。……わたしが言いたいのは、『もっと自分を大切にして欲しい』と言うことだ」


「……っ」


「お前が何時も龍英に住むの民のため、一生懸命頑張っているのはわかってる。だが、お前は私の大切な娘だ。娘が危ないことをしているのに父親が黙って見てるわけにはいかないだろ。父としては……少しでもいいから、自分を大切にしてほしいのだよ」


「……パパ、ありがと」


父と姉の会話を見てる双子の兄弟は


「全く、父上は何時も姉上に甘いのだから」


「そんなこと言っちゃって〜。兄さんだって姉さんが事件起こしたって聞いて、まいどまいど『姉上が!? 無事なのか!?』って焦ってるくせに〜」


「う、うるさい…少し黙れ!!」


「え?ひょうくん お姉ちゃんの心配してくれてたの?」


照れ隠しをしている涼介に満面の笑みを見せる青蘭


「あ、姉上もこんなバカ弟の言うことを真に受けないでください!!」


「もう、いくつになってもひょうくんは可愛いんだから」


「あはは、兄さんはいつも姉さんに勝てないよね」


「う、うるさい!!……だいたいお前が!あんなことを言わなければ……」


といいことを言った父を忘れ兄弟が仲良く話しているのをみている泰青


「全く……、仲のいい兄弟だ」

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