第5話 政略結婚の悲哀

アナベル「そうねえ、ボブは知っておいた方が、後々変な誤解を生まなくていいかも…」

ケビン「そうですねえ。

    これは内々だけの、世間には知られていない話なのですが、実は10年前、僕が王位継承権1位ではなかった頃

   …僕がアナベル姫に婿入りする話が持ち上がったんですよ」


3人「ええっ?!」

あっ、でもそうか…

10年前のアナベル姫様は、ハミング王国結婚可能最低年齢の16歳。

王位継承権1位なのだから、すぐに結婚して世継ぎを、という話になるだろう。

ケビン王子は23歳、年齢的にはちょうどいい。


ケビン「しかし、当時のアナベル姫は拘りの強いお方、にべもなくお断りされてしまいました」

アナベル「25歳までは自分で納得いく相手を探したい!と突っぱねたの。

     あの頃の理想は今思えば、そんな男性この世にいない! レベルのもので、ケビン王子は全く悪くないのに、お恥ずかしい」

ボブ「わあ、俺マジでギリギリだったんだ」

ケビン「まあ、そのおかげで命を賭けるほど愛情の深いボブ王子を見つけられて、すぐに世継ぎもできたのですから慧眼と言えましょう。

    しかし、こちらは…

    あの時婿入りしなかったのは国の後継を考えたら結果オーライだった、ラッキー、と思いきや、カメリアには別行動をされまくり、余暇には趣味の予定を入れられまくり、帰ってきたら毎日クタクタ!と言われて世継ぎどころじゃないですよ…

    恐らくカメリアはお三方のような華のある男性が好きなんです…」

クロード「そうですか? ケビン王子ってあまり僕と変わらないと思いますが」

コーディ「あっ、クロードはナルシストだから、ケビン王子かっこいいって意味ですよ。

     俺もそう思いますけどねえ」

ケビン「それはどうもありがとうございます。

   たしかに黒髪ストレートで化粧っ気は薄い、という点ではそうかもしれませんが

   …でもやっぱり何かが違う気がします。

   華のある趣味をお持ちなんでしょうか」

クロード「いいえ、自信ですよ」

ケビン「たしかに自信って表情や仕草に出て、それが華やかさに繋がるような気はしますね…」


ボブ「改善すべきはそこじゃないと思う。

   カメリア姫みたいな若くてまだまだ人生を楽しみたい女性に、世継ぎの為に仲良くしようね、なんて態度では、そりゃ重いなあと思われて距離を取られるよ。

   愛してるから仲良くしてくれと、嘘でもいいから言って、ケビン王子といると愛されてて幸せだな〜ってカメリア姫に思わせなくっちゃ」


ケビン「違う…!   

    僕はカメリアを愛している!

    公務も頑張ってくれているし、同じようには楽しめなくても、ショッピングやダンス楽しかったー! って明るくウキウキしてる姿が可愛らしくて…

    こんな状況で嫁入りしてくれたのに、振り向かせられない僕が悪いんだ…」


ボブ「そ、それは申し訳ありませんでした!

   でも、その気持ちは伝えたんですか?」

ケビン「恋愛結婚でもないのにこっちからそんなこと言ったら、11歳も若い子にがっつくヤバい奴みたいでしょう…」

コーディ「あー!! その気持ちはわかる!」

アナベル「そうね、私も両親に言われたもの…

     政略結婚で恋愛みたいなノリになれて子供を作るには若さの勢いが必要、大人になり過ぎてからだと気恥ずかしさでブレーキがかかる、だから自力で理想の相手を探すのは25歳までにしとけって」

ケビン「僕は31歳まで次期国王じゃなかったから、独身で料理の道を極めるのもアリ、って言われてこうなっちゃいましたよ…

    王子らしい帝王学の方も中途半端だし、カメリアは王族らしく美味しい料理を食べて育ってきたので、料理はアピールにならないし…」

あー、跡継ぎ以外のお偉いさんの息子が独身の文化人になるパターンよくあるね。


クロード「でも、ケビン王子の態度がどうあれ、カメリア姫と結婚した時点で『ヤバい奴』の誹りはある態度免れないのでは?」

ケビン「そうなんですよね…」

アナベル「政略結婚だからケビン王子が選んだわけでもないでしょうに理不尽ね、寧ろケビン王子は最初から選べるなら歳の近い女性にするタイプでしょうに、他に適齢期の釣り合う女性がいなくてそうなっただけでしょうに、頭の悪い民ってほんとにどこでもそんなのよね」


ボブ「でも、どうせそう言われるなら、愛し愛され世継ぎもバッチリ作っちゃう方がいいじゃない! 好きって言いなよ!

   …いや、俺もちゃんと告白した訳じゃなくて、運良く伝わっただけだからあまり偉そうには言えないけど」

ケビン「そうしたいけど…」

アナベル「頼むからそうしてよ、私だってこのままじゃ後味が悪いわよ!」


本当にアナベル姫はさっきからひどく居心地が悪そうだった。

アドバイスしようもんなら振った奴の上から目線になるもんなあ。

俺は、役に立つどころか、わがまま言って姫様に気まずい思いをさせてしまった…

なんとかしなくては。

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