第4話 コレオ王国のお姫様

次の日、クロードはいかにも魔法使いらしい群青色の帽子と、同色に幾何学的な金刺繍の入ったローブ、そしてなぜか薔薇のブーケ型をしたステッキを携えてやってきた。

俺がひたすら車を走らせるが、エルフの国は遠く、夜になってしまった。

ボブ「そろそろ泊まっていくか…」

クロード「しかし、コーディのその、とうぞ…商人の衣装が似合いそうなエキゾチックな国だね」

コーディ「俺もちょうどそう思ったところ」

アナベル「コレオ王国よ。

     ダンス文化があるからうちのハミング王国との親交は深いの…」

その割には姫様の言葉はどこか煮え切らないものがあった。


宿屋を探していると、

「あっ、アナベル姫とボブ王子!」

明るい声に振り向くと、女性版の俺

…と言っちゃ失礼か、でも俺のと同じようなテイストの服や装飾品をマックスまでお高そうなものにして、金髪にバッチリメイクにヘソ出しの若い女性がいた。

アナベル「ど、どうも…

     こちら、コレオ王国の次期国王、ケビン王子に一昨年お輿入れなさった、カメリア姫よ」

クロード「ひ、姫様?!

     なぜそんな方がこんな夕暮れに繁華街に…」

カメリア「それはそっちも一緒じゃーん!」

ボブ「まあ、こっちは旅の途中ですし、しかも夫婦で来てますし」

アナベル「ボブは、結婚前はもっと遅くまでこういう所を一人で歩いてたけどねー」

ボブ「もー、アナベルっ!」

カメリア「いいなー、歳の近い恋愛結婚だと仲が良くてさ! 

     私達より後に結婚したのに、もうご懐妊おめでとうございますだし!

     せっかくだし宮殿で色々話そうよ、旅なら泊まる所に困ってるんじゃない?」

ボブ「わー! 行きたい!」

アナベル「えっ、ちょっと…」

コーディ「正直…デザインの勉強になりそうだし、この国の宮殿は見ておきたいなあ」

アナベル「…わかったわ、お邪魔しましょう」

アナベル姫様はどうしたんだろう…

他所の王族の前では粗相のないようにと緊張するから気が進まないのかな?

カメリア姫様の方は同じ王族としてシンパシー感じてるようだけど。


素晴らしい内装だ。

アンティークな家具に、細かい絨毯の刺繍、無事帰れたらこんなデザインの服を沢山作ってみたいものだ。

これらのうち一つでも汚したり壊したりしたら、とんでもない請求額になりそう…


カメリア「うちのケビン王子って11歳も上なんです。

    2年前にお兄さんが、封印されてた悪いランプの魔人を解き放つ問題起こして次期国王の座を追われたので、今まで自由にやってきたのに急に王位継承権1位になって、結婚して世継ぎを作らなきゃいけない立場になったから、慌てて私と政略結婚したんです」

あー! そんな事件あった!

カメリア「みんな、次期女王様なんていいじゃない、って言うけど、早くたくさん世継ぎを作るには相手は若い娘! でもさすがに30代相手に10代はまずいから当時20歳の私! っていう周りの思惑が露骨すぎて萎えるよ!

     しかも、ジェネレーションギャップがある上に、あっちは趣味が料理やらスポーツやらで話が合わなくて!

   こっちはショッピングやダンスが好きだから、一緒に出かけられないよ!」

アナベル「ああ、なるほどね…」

カメリア「本当にアナベル姫様が羨ましいよ!

     ところで、こっちの人は服装で魔法使いだってわかるけど、そっちのうちの国みたいな服の人は、何する人なの?」

ぎくっ。

アナベル「コ、コーディは運転手兼、自分で服も作るモデルの友人でね!

     旅のついでに異国の服も買って帰りたいな、コーディならセンスあるの選んでくれそうだな、と思って!」

カメリア「なるほどー!」

アナベル姫、ありがとうございます…

メイド「姫様、ダンスレッスンのお時間です」

カメリア「あっ、そうだった!

     ここで好きなだけくつろいでていいよ!」


カメリア姫様が席を外したのと同じタイミングで、アナベル姫様もお花摘み(お手洗い)に立った

…瞬間、ボブ王子が伸びをして大声を出した。

「ああーーっ! 疲れたーーっ!」

クロード「ああ、やっぱりボブ王子も庶民出身だし、姫様二人のお相手は疲れるんですね」

ボブ「じゃなくてさ

   …カメリア姫様のおヘソと谷間をなるべく見ないようにするのに疲れた!」

コーディ「あははははは!

     たしかに、そんなのバレたらどちらの姫様からも顰蹙買いそうですもんね!

     しかし、とんだ王子様ですね!」

ボブ「コーディさん、笑いすぎ…」


本当に笑い過ぎたらしく、振り向けば、今お帰りになられたらしい出で立ちのケビン王子が、客間を覗いてギョッとしていた

…が、奥の上座を見て、

「なあんだ、ボブ王子御一行であらせられましたか」

と胸を撫で下ろした。

ま、そりゃそうだよな。

派手な格好の妙齢の男達(しかも手前二人に見覚えがない)が客間でワイワイしてたら、そりゃ誰でもギョッとするわ。

ボブ「お花摘みで席を外しているだけで、アナベルもいますよ」

ケビン「さ、さようですか、」

アナベル「あっ…」

二人の間に重苦しい沈黙が流れた。

ボブ「ちょっと! 二人、何かあったの?!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る