第2話 暗くて寒い場所。
「寒い…… 此処は、どこ? 」
「目が覚めたかいお嬢さん。」
「誰? 誰かいるの。」
「ああ、お嬢さんの近くにいるよ。」
周りが暗くて何も見えないだろう。こんな所で目覚めて、どれ程心細いであろうか。
「うっ……うっ……うっ…… 」
「痛え、痛えよ……… 」
「誰? 他にも誰かいるの? 」
「ああ、他にもいるよ。」
女性の泣き声と男性の苦痛の声に、恐怖が沸き起こっているだろう。可哀想に。
「此処は、どこ? 」
「お嬢さんは何も覚えていないのかい? 」
「わからない、わからないわ!! 」
お嬢さんの声が不安に震えている。きっと恐怖で記憶が飛んでしまったんだろう。
「此処は、巨人の住み家さ。」
「巨人、あの巨人さん? 」
ああ、本当に記憶が飛んでいるんだね。可哀想に。
「どうして巨人さんが私をここに? あの優しい巨人さんが? 」
「何が優しいものか!! 彼奴等は悪魔さ!! ううっ……… 」
男性の苦痛の声が聞こえる、無理もない彼は巨人に酷い目にあっている。いや、彼だけじゃ無い此処に連れてこられ閉じ込められ、そして……
「どうして? 巨人さんは怖いモンスターから私達を何時も守ってくれていたわ。喉が乾いたら水まで持って来てくれたわ。」
「はは… 其れが彼奴等のやり口さ。」
「そうよ…… 優しいふりをして近づいてきて、こんな酷い目に合わせて…… 」
吐き捨てるように声を出す彼と、諦めたように囁く彼女。
「うそよ、うそ!! 」
「嘘じゃない!! 奴等は俺の体を半分切って持っていった。一様、こんな薄いもので包んで手当でもしているつもりか!! 」
「そうよ……私のドレスを奪ってそれだけでは飽き足らず、皮まで剥ぎ続けているわ。」
彼は体を切られ、彼女は皮を剥がされ続けられている。
「うそ!! 」
信じられないのも仕方がない、お嬢さんは此処に連れてこられるまでの事を忘れているのだから。とても怖い思いをしたのだろう。
「そこの白い鎧を着たやつなんか、釜茹でにあって死んだんだ!! 」
暗くて見えないだろうが、彼の言っている事は本当だ。熱い熱いと、悲鳴を上げる声が今も耳を離れない。
「うそよ!! 」
ああ、お嬢さんは信じたくないのだろう。わしもそうだった、温かい寝床から叩き出されるまでは。水に洗われ、巨人達の手を売り買いされて、この場所に閉じ込められ、忘れ去られた……
ー ガチャ ー
扉が開くと部屋の中が明るくなる。巨人が中を覗いている。
「きゃあああぁーー!! 」
お嬢さんが悲鳴をあげた、赤い水々しい美しいお嬢さんが。半分に切られた彼と、皮を剥かれ痩せ細った彼女を目の辺りにしてしまったのだ。
「いやぁあ!! いやぁあああぁぁーー!! 」
「クソぉ!! 悪魔め!! 」
「許して!! もう、許して!! 」
巨人の手がお嬢さん達を掴んで連れて行く。あの鎧を着た白い者も。
ー パタン ー
ああ、またわしは置き去られるのだな。そしてこの狭く暗い部屋で連れ去られた者達の断末魔の叫びを聞くのだ。
「クソぉ、クソぉお!! 」
「痛い痛い、やめて!! 」
「お母さん!! お父さん!! 助けて!! 」
ああ…… わしも、もう限界のようだ。体は干からび、意識も無くなりそうだ……
「………… 」
ー ガチャ ー
『あ~!! やだこのニンジン干からびてる!! 』
【完】
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