第7話:正真正銘の頑固さ

「皿の運び方可愛い〜!ありがとう!」

「どういたしまして、あむあむ」

マリーは今日の十個目のクッキーを口で咥えながら、両手で運んでいた皿を客たちに渡す。マリーがカフェで働くようになってからもう一週間。最初は会話の練習で働いて貰っていたマリーはもはやはここの看板娘となっている。そのおかげで客の数が急増して、マリーには数え切れないほどの成長の機会与えられたけど…

「俺のカフェは…こんなはずじゃなかった…」

自分の穏やで小さなカフェのか消えかけている事にゲールは嘆いているようだ。

まあ…分からなくもない。こんな人数で私たち二人とマリーでは少し無理がある。

「すみません!あたしの特別産紅茶はまだ??」

「少し待ってくれませんか〜?作っている途中ですので!」

「十秒ででちゃうものでしょう、一体何しているの??」

聞こえる…?

本当に、疲れた…サービス業なんてもうやりたくない。

だけどこの状況ポジティブといえば、マリーちゃんの進歩は大袈裟でもなく凄い事になっている。記憶力、人間性、語彙力が明らかに上昇。普段最低限の言葉しか使わなかった彼女は今も文章を使っている。

「トクベツサン紅茶、持っているから安心して」

「わあ〜!ありがとうございます!」

そんなマリーちゃんを見ると誇りに思う。

「私たちの努力の成果ですね、ゲールさん」

「どうみてもクッキーのお陰だろう」

マリーをクッキーで賄賂すればいう事をちゃんと聞いてくれる。私たちはそうヴィル殿から学んだ。

ぐう!!!認めたくないけど、あれは確かにマリーに劇的な変化を与えたのね…ヴィル殿に恩を感じてしまう…

客たちと応対しているマリーをみるとやっぱ子供の成長が早いね~っと親じゃないのに、まるでいつの間にか、子供を産で、育ててみたいな気持ちになる。

私がバカな発想をしている間に、マリーちゃんは客たちから離れて、また私の元へとパタパタ小走りしてくる。

「カミラ、カミラ」

「ん?どうしたんですか?マリーちゃん」

「クッキーよりいいものはない?」

「クッキーよりいいもの?どうしたんですか?急に」

「クッキーはもう飽きた」

「…」

あっ。不味い。クッキーは一気に使え過ぎた。

「そ、そうですよね…流石にそれなりますもんね…」

クッキーなんてなにがある?プディング?ケーキ?

「馬が欲しい」

「馬?!!?」

用意できるわけあるか?!?

でもそういえば、マリーちゃんって昔から馬に興味があったよね。

「可愛いねマリーちゃん、あたしも子供のころ馬が欲しかったわ~」

立耳をしていた近くのテーブルの女性客はそう語った。

聞いていなかったけどそうですか。私はいつも両親に珍しい茸や植物が欲しいと頼んでいたけど…そうか、奇妙なのはマリーじゃなくて、私か…

これは…後でゲールと相談するしかないみたいわね。却下されるだろうけど。

馬の形をしたクッキーでも満足してくれるのかな…?


「エフウ!アフウ!あぇ」

ある日、空はまだ青くなりつつある朝の時、男の酷い咳が家全体に響き渡った。

「なに〜?うるさいんだ…ですけど~?」


もちろん、私を起こすぐらいの音量は十分にあった…残念ながら。

「エフウ!アフウ!」

止まらないね。

「ああ、もう…」

一度起きたらまた寝付けない。だったら文句をいってやろうか。

眠気が覚めていく私はベッドから立ち上がって、とりあえず自分の借りている部屋を出る。

「アフウ!うえぇ!はあぁ…」

「もう煩いです。何時だと思っていまああああああ!??!」

目を擦りながらリヴィングの角を曲がったら、顔を血で塗れたゲールはキッチンの流し台の前に屈んでいた。

「うあぇ…はぁぁ…はぁぁ…へ、カミラか」

ゲールは私の方に振り向いて、さりげなくと私の存在を認知した。

「カミラか…じゃないでしょう!どうしたんですかこれ?!」

体に残っていた眠気が一瞬で吹き飛ばされる。先も考えずに私は急いで、彼の状態を看る事にした。

服が汚れてもどうでもいい。

ゲールは大量の血を失っている。見るからには咳と一緒に出ているから問題は肺?いやお腹?医学学校にいた期間は短かったけど、簡単な診断ならできるはず…

「あああ!!わかりません!医薬の授業以外も通っておけばよかったです!」

無能か?!私!?彼らのいう通り私は無能!好きな事以外に集中できないし、頭に入ってこない。そのせいでゲールが…

「落ち着け、俺は大丈夫だ、いつもの事…だ。すぐはよくなる」

「これは頻繁に起こっていることですか!?なんで今までは?!」

「お前の問題じゃないから隠したに決まっている」

「私は一応医者みたいな感じなんですが?!」

「ふざけるな、ポーションで全部の問題を解決しようとするお前は医者なわけあるか」

「しません!そんなの」

「昨日だって紙切の傷をポーションで直そうとしたんだろうが」

「あれは痛いからに決まっています」

「少しぐらいは痛みを嚙み締めろ」

「あなたは逆に自分の痛みに関しては素直になってください!医者にいくべきですよ!」

「医者はお前みたいなもんなら結構だ」

「喧嘩を売っている場合ですか!?顔が青いですよ!?血を失い過ぎです!」

私はゲールの脇の下に潜り込んで、彼を運ぼうとする。

「馬鹿、なにをする」

「医者まで運びます」

「は!お前にそんな力はないだろ」

「本来はそうですね」

私は懐から小さなオレンジ色のポーションを取り出し、一飲みで呷る。ポーションの魔力は私の身体のあらゆるところにながらて、血脈まで力にみなぎっていくのを感じる。

「よいしょ」

「おぉお?!」

「緊急の筋力ポーションです。効果時間は短いですから急ぎます」

おっとと私より身長の高いゲールを背中に載せて、バランスを取る。彼の顔から垂れている血は墜落し、私の好きだったパジャマが汚れる。

「ま、待って!マリーを一人にする気か」

また窓から飛び降りたらどうする、とゲールは言いたいだろう。

「あの子は以前とは違いますよ!多分…」

あの日からマリーを一人にした事がないので本当はわからない。

「せめて出かけると知らせよう、な?」

あんた…どれだけ医者に行きたくないのか。

「はぁぁ…わかった、わかりました!でも速やかにしますよ?」

不承不承ながら、私はリビングで半睡眠状態で置かれていたマリーのいる所までゲールを背負う。彼女は寝る事ができないから、毎晩彼女の内部直接に『短期睡眠』みたいな状態を促す薬を入れている。

四六時中活動していたら色々と問題になるからね…

「マリーちゃん、そろそろ起きていますか?」

「起き…ている」

「俺の好きなアイスクリーム」

「アイスクリーム?」

半起きのマリーはゲールの質問に瞬きをする。ゲールのいつもの記憶テストだが、今の私たちの状態はどうなっているのかに気付く。

「なにしてるの?」

ごもっともの質問。

「俺らはいいから答えろ」

「バニラ?」

「ミントだ、阿保」

相変わらず不正解ね。クッキーをやってこの質問だけには正解に答えた事はない。クッキーよりゲールを怒らせる事が彼女にとって望ましいみたい。

「俺たちは少し出かけるからバカな事はするな」

「ん…わかった…」

「はいじゃあ行きますよ!」

「おぅお?!ま、待って!?」

ダラダラしてたらポーションの効果が消えるから仕方ない。私はゲールを背負ったまま、静かな朝方の街道へと小走る。

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