第20話 まさかいまだにこのテーマで書けるとは

 急いで書かないと、もう次作が公開されるわ!

 ってことで、『水の国の物語』が終わったら書こう、と思い続けていた雑記ネタを書いておきます。


 前にも書きましたが、『水の国の物語』というのは大学受験の前に着想したものでした。


 昔は今ほど「将来なりたいものに向かって」みたいな教育ではなかったですが、それでもやはり、大学進学となると将来を考えます。

 まだまだ、女の子が大学行っても、ねぇ?と思う風潮は残っている時代でした。わたしは親が転勤族だったので、いろんな地で育ちましたが、高校は地方。わたしはもともと生まれが東京だったので、大学は当たり前に東京以外考えていなかったのですが、周りの子たちは意外と「親が外に行くなというから」地元に残る、という子が多かったのです。


 早稲田、慶応あたりに受かっても、地元の大学に進学する女の子が多かったので、ひそかに地元国立大学の偏差値が高いんですよ。結局、そういう高偏差値の大学に受かるような子たちが残っちゃうから。


 若干先進的な考えをお持ちの親を持ってると、東京に出てくるイメージですが、やはりみんな地元に戻れと言われて、地元で教職とかが多かった記憶です。


 世代的にも、「男女雇用均等法第二世代」。第一世代とかなんやねん、と言われそうですが、大まかに男女雇用機会均等法施行後すぐから、育休という制度が法制化されるまでが第一世代。そこから男性育休の話題が出るころまでが第二世代。じゃないかなぁと思います。今は第三世代ですかね。


 で。ちょうど、大学受験のころって、雇用機会均等法(と、バブル)の波に乗って総合職として就職した女性たちが、「こんなはずじゃなかった」って夢破れて去っていく、っていうことが顕在化していた時期だったようです。だったよう、なのは、そのときは受験で手一杯で、そんなニュースを追うどころではなかったから。


 なのになんで覚えているかというと、父がね。

 大学行って総合職で働いて自立するんだ!と息巻いていた私を心配したのでしょうね、日経新聞の記事の切り抜きを持ってきたんですよ。その、夢破れて職場を去っていく女性の特集の記事を。


 おそらく、その当時の父自身も、そういう女性部下を何人も見てたんでしょうね、今にして思うと。

 そんなの見ていて、うちの娘もこうなるんじゃないか?と心配したんだと思います。病気遍歴のエッセイを書いちゃう病弱ぶりは、子供のころからですし。


 長じて、社畜だとぼやきながらも働き続けるようになるのですが、まあそれは別の話で。


 そんな記事を見せられて、「あぁそうかじゃぁやめようかな」なんて思うようだったら、そもそもまだ女性総合職が特別視される事態に、「総合職で働いて自立!」なんて言い出しません。「なにくそ!まけないぞ」ってなりますよ。、病弱で体力はなかったですが、根性で男子を蹴散らしてトップ街道を爆走してましたから!


 そんなときに『水の国の物語』を思いついたわけです。


 これはもう……女性を主人公にした時点で、主人公が「強い女性」になるのって既定路線だと思いません?

 滅びる人々を書きたい、いろんな男性の愛し方を書きたい、そう思っていたのは事実ですが、それと同じぐらいに女性だって負けずに政治の中心で活躍させたい、っていうのが強烈にあったんです。


 でもね。


 そのあとすぐに執筆してなくて、どんどん時間が過ぎているうちに、そうだな、就職数年たったころに、今書けないでこのまま寝かせ続けたら、きっと、強い女性スーインなんてもう、書いたって意味ないぐらい陳腐化する時代になるんだろうなぁ、そうなったらスーインの性格を変えないと世に出せないだろうなぁってうっすら思っていたんです。


 ですがね。


 今年の春に思い出して、この話を形にしようとしたときに。


 あれ。スーイン、強い女性のまんまでいいじゃんか。


 いうほど、女性ってまだまだ大変じゃね?


 って思いまして。

 これだけ年数経ってるのに、女性の環境って言うほど変わってないじゃん?このネタ、いつまで使えるんだ?って実はちょっとだけがっかりもしました。


 まぁ、つい先日は女性総理が誕生しましたし、男性の育児参加率は断然上がりました。働きやすさはレベル違いで上がってはいます。


 でもね。やっぱりまだなところも多いです。


 若い世代はだいぶん女性も増えてはいますが、ちょっとレイヤーが上の打ち合わせに出ると、あれ、気が付くと女ってわたしだけ?が多いです。

 テック系業界にいるせいか、展示会のカンファレンスなんかで見渡すと、ダークなスーツをきた男性だらけ。登壇者もほとんど男性。女性は、ブースの呼び込みとかが多くて、ううーーーん。まだ性別分業があるなあ。と思うことも多いです。


 同数であることが正義であるとは思ってないですし、そうあるべきとも思いませんが、ここまで偏ると、体感の女性率が5%ぐらいっていうのはさすがに、まだまだなんじゃないかと思うわけです。


 最初の着想通りの小説をかき上げられたことは、とてもうれしかったことではありますが、結局世の中が変わっていなかったっていう見方もできて、書き終わった時にはちょっと複雑な思いをしていたのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る