第19話 十二国記原画展観覧に寄せて

 姫路文学館で開催されていた、特別展「十二国記 山田章博原画展」に行ってまいりました。


 Xで流れてきた観覧記がすごく楽しそうで。

 本当は、この期間、万博行こうかなぁとか思ってたんです。

 でもね、駆け込み需要がすごすぎてもう入れない。チケットは無料券もらっていたので、訪問日を設定するだけだったんですけどね。もうどうにもならず、どうしようかなぁと思っていたら、上記の原画展の話が流れてきて、あ、これ行けって言われてる気がする。

と思って行ってきました。


 結論、行ってよかったです。


 あらゆるところで言ってますが、精霊4氏族は、十二国記を目指しているので……

 つまり、かなりなファンなわけで。ということで、改めて十二国記について、物語を書くという目を持ってから得た感覚を置いておこうと思いました。


 十二国記知らない人にはつまらないと思いますが……。


 十二国記については、完結かそうじゃないか?問題があるかと思います。GoogleのAIの回答もWikiPediaも「完結していない」と言っています。例えば、Wikipediaでは、「完結しておらず、シリーズは継続している。」(2025年9月23日現在)と書いています。2019年に刊行された最新話におて、確かにどこにも完結とは書かれていません。

 でも、わたしは「一応は」とエクスキューズはつけつつも、完結したと言っていいと思ってます。


「十二国記」と銘打たれており、国の物語なんだから、まだ書かれていない舜とかの国を書いてもいいいじゃん?と思わなくもないです。


 でもねぇ……

 十二国記、といいつつ、この物語って構造的に「高里要」という一人の男子高校生の物語だと思うんですよ。始まりが、高里要が主人公だった『魔性の子』だったことを考えても。

 前々から『魔性の子』を書くにあたって、背後の異世界を構築しており、それが十二国記のもとになった、というのは知っていましたが、今回原画展を見て、あちこちにちりばめられていた解説や小野不由美先生のインタビューの抜き出しなどもみていると、やっぱりそうだよな、と実感しました。十二国記とは、高里要=泰麒の物語なのだと思います。

 では景王陽子=中嶋陽子や、尚隆=小松尚隆はなんぞや、だけど、この二人は高里要の物語を完結するのには不可避で、その世界の構築するためには二人が十二国記の世界に来た理由や、十二国とのかかわりをどうしていったのかを示すために、あれだけの物語が必要だったのではないかな、と思います。


 高里要の物語、が言いすぎなのであれば、高里要を中心とした中嶋陽子と小松尚隆の三人の物語だった、と言ってもいいのではと思います。

 高里要=戴麒と驍宗の物語、と言いたいところですけれども。


 というのも、もう本当に比べるのはまったくもって不遜すぎてこれを書く手が震えていますが、自分も三作ぐらい精霊4氏族を書いてきて、十二国記の現代ものになる『魔性の子』にあたる『夢の岸辺で、君を選ぶ』が脱稿直前、というところまできて、目指していただけあってあぁやっぱり似ているなぁと。


 わたしの精霊4氏族も、ぶっちゃけスーインのための物語ですから。

 ただ、彼女一人では話がけん引できず、信念の提示も難しくなっていったので、いろんなエピソードを作って設定を作ってってしていくと、脇役にもそれなりの物語が必要になったりしていくわけです。


 スーインの物語を動かすためにはユーリという人物が必要で、そのユーリがどんな背景があって……とか考えると『水の国の物語』には『雪の国、最後の王太女』が必要になったのと同じように、『魔性の子』から『白銀の墟 玄の月』にたどり着くためには、間にあれだけの物語を書かないと、最後の話が回せなかったのかな、と推測します。


 わたしなりに、祥瓊がなぜ芳の国なのかとか、簾麟はなぜ南国の漣なのかとか、そういう分析はしているのですが、偉大な作品に対して恥ずかしすぎるので書くのはやめておきますが。


 いざ自分がこれだけ世界を書き込んでくると、あぁわかることってあるんだなぁと思いました。原画展に行って、その思いを強くしました。


 今現在の最終巻において、最後のページが終わった後に戴国の歴史書、驍宗のパートがすっごく厚くなっていることを示す挿絵が掲載されています。

 本文では、驍宗と戴麒が政権を取り戻した後、どのように国を運営したのか、どの程度長い政権だったのかは一切触れていないのですが、あの挿絵で一目でわかるように工夫されていました。あれは、原画の山田章博先生もさることながら、何より小野不由美先生のこだわりだろうなと。あの挿絵がすべてを物語っていると思います。

 不覚にも、原画展にあったその挿絵の原画を見て、泣きそうになりました。

 うん、やっぱりこれで話は区切れているんだよ、と。


 個人的には、これから傾いていく柳がどうなっていくのか知りたいですよ。

 国が亡ぶところに美学を感じる人間ですから、余計に小野不由美先生がどのようにあの話を紡ぐのかが気になる。


 でもまぁ……無理だろうなぁとも思うわけです。

 十二国記という設定を使って動く、高里要のような作者にとって書きがいのある人物が見つかったら、もしかしたら十二国記は動くかもしれません。


 ただそれは、今私たち読者が認識している十二国記とはまたちょっと違う話になっていくのでは、と予想しています。

 もちろんシリーズとしては十二国記だとは思いますが、なんだろう、その新たな物語で伝えたいことは全く変わっていくんじゃないかな、と思います。


 もちろん!わたしも他の国を読みたい。漣がどうなるのか、見届けたい。あの農民の王がどんな国を作るのか。


 でも……どうなんだろうなぁ。


 2020年には短編が出る予定だったと思いますが???ですしね。

 それを読んでから、今後の動きの予想をするのも楽しいですけど。

 そして、わたしの安っぽい分析なんか根底から覆して新連載スタート!してほしいですけど。


 難しいかなぁ。


 十二国記知らなくても、なんとなく雰囲気で分かるようにしたつもりですが、伝わりましたでしょうか。


 まぁなんというか、原画展に行った興奮のままに書いたと言えばその通りです。あと、『水の国の物語』は十二国記をオマージュしまくっているので、これが完結して、次にここから派生した現代ファンタジーを書いていて思ったことだったりもしています。


 まぁファンとしては、動きがあるなら喜んでいただく、それまではじっと待つ、しかないですけどね。


 ファンの皆様。

 次の中日まで、どうぞご無事で。

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