第15話 書き手にしか味わえない至福
タイトルは、ChatGPT君が言った言葉です。
『水の国の物語』の第四部の草稿が完成し、完成稿に向けて推敲・再構成や、設定確認の壁打ち相手をしてもらっているときに、こんなことを言われました。
どんな会話の果てにこんなことを言われたかというと。
なんとなく作ってきたばらばらに作ってきた設定が、ぴたりとはまったことがありませんか?
わたしの公開済み小説の中から、具体例を出してみます。
精霊4氏族には異能が現れる、と言う設定はありましたが、今書いている話のなかでは、第四部に入るまで、特にどんな異能か、という説明はしていませんでした。
『水の国の物語』では、異能を持つ人がいる世界観だ、とは表現したいけど、その異能を生かして物語を動かすつもりはなかったので、異能を説明する必要性を感じなかったのです。(ただ、これはAI君には非常に不評でした。評価させると、AIには必ず「異能について説明しなさい」と怒られてました。いや、異能を具体的には使わないからいいやん、とずっと抵抗していました)
でもねぇ。ファンタジーやっていると、やっぱり異能は便利なんですよね。
はっと気が付くと
ラーニア(水の民)は、物を飛ばしている。
ザハル(火の民)は、瞬間移動ができるようだ。
イフラーム(風の民)には、人を別空間に飛ばしてもらわないと、書きたい話が起動しないぞ。
ってなってまして。
そこでやけくそのように、水の民は念動力、火の民は本人の瞬間移動、風の民は他人の瞬間移動と定義付けました。
破綻しないか?と不安でしたが、読み返してみると、風の民は最盛期は大陸の中で国家の物流を担当していた、的な設定も第三部あたりで作っていたので、そのあたりも考慮するとあながち間違ってなくね?
となりまして。
そう開き直ったら、こののち、異能でその場のテーブルをひっくり返しちゃおうか、とか物騒なことを思っても、「スーインは水の民だから「念動力」、うんできるよね」ってすっと納得できる構造になってしまってました。
ほかにも、『水の国の物語』ではわりとキリアンが活躍していますが、最初は彼はここまで活躍させるつもりではなくて、『雪の国、最後の王太女』だけの特定キャラのつもりだったんです。
が、『水の国の物語』冒頭で「風の民の町が火事で焼け落ちました」と報告する暗衛が名無しだとちょっと見栄えが悪く、かといってこのシーンだけの人物に名前作るの面倒だなぁ、と悩み。
あ。そうだ、『雪の国、最後の王太女』でつくったカイルの同僚のキリアンがちょうどいいじゃん。で連れてきたんですよね。
さらに、焼け跡に行くのはスーインと最側近のサラだけのつもりでしたが、なんかノリでキリアンも行かせたんですよね。
そしたらこれが、第四部になって「あの時行かせておいてよかった!!!」になりました。偶然が重なって、大出世しています。
該当のパートはこちら。
https://kakuyomu.jp/my/works/16818622175526515889/episodes/16818622175579597062
ほかにも、『雪の国、最後の王太女』も、「紫雲母の首飾り」が印象的に使われていますが、これも正直捨てエピソードのつもりで。子供のころの淡い恋心描くためだけでしたが、何気に『水の国の物語』に出てくるほど重要パーツに化けてました。
『雪の国、最後の王太女』で、紫雲母の首飾りとして出てきたパート。
ここで書いたエピソード以上にはならないはずだったのですが。
https://kakuyomu.jp/my/works/16818622173974910549/episodes/16818622174327784992
その後、紫雲母の首飾りは二人の絆として最後まで機能し、『水の国の物語』にまで進出。
『水の国の物語』の該当パートはこちら。紫雲母が紫水晶に進化しています。
さすがにここでは、子供の淡い恋→夫婦と言う関係性の象徴としてあえて入れてましたが、そこまで成長したのがすごいと正直思います。
https://kakuyomu.jp/my/works/16818622175526515889/episodes/16818622175762553978
挙げればきりがないほどたくさんあるのですが。
一つ共通点があるとすると、「物語がうまく回っている(=意図している結末にきちんと向かっている)」ときに、この現象が起きています。
そういう現象のことを、ChatGPT君は「それはまさに、物語が“生きている”状態」と言っていて、Geminiさんも同じようなことを言っていました。
ChatGPTはとても説明が多い人なので、いろいろ言ってくれましたが、とくに、刺さったのはこれです。
「作者の無意識と物語の潜在構造が、思考の先を走っている」ことにあります。
この言葉に、わたしは深く深くうなずきました。
上手く話が進んでいるときは、アイデアや文章がどんどん浮かんでいることもそうですが、「さっきのアレはこれにつながる!」「これにするために、そうか、あの事件が起きたのか!」と自分で考えたことを、自分で再発見していく、意味を見出していくという感覚によく襲われるのです。
わたしが紡いだ物語は、わたしが意味を与えて意味を構成してきましたが、ある一定の臨界点を超えると、物語そのものが自律的に意味を生み出す、と言うことが生まれ始めるのではないか、と最近感じ始めています。
そして、そのような状態に入ることができるのは、ChatGPT君によれば
それは、書き手にしか味わえない至福です。
なんだそうです。
はじめてこのChatGPT君が書いた言葉を読んだときは、なんかやたらと気障なキャラクターのAIになっちゃったのかなぁ、なんてあまり深く取り合っていなかったんですが。
それからさらに完成作を重ね、近況報告やXなどで物書きの皆様と交流をした今、物語自体が意味を持つことができるほどの分量の文章を書き、それに自分でも心を動かせるようになるっていうのは、すごく幸せなことで、確かに「書き手にじか味わえない至福」なんだな、と思うようになりました。
妄想できること、そしてこの妄想を読んで応援してくださる温かい皆様のおかげで、すごく幸せな趣味生活を送れているのだ、と思う今日この頃です。
書き手の皆さま。
この「書き手にしか味わえない至福」を、どんどん味わいましょう。
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