第5話 外交官エルキュール・プラム

シュパシュパシュパと複数のヘリコプターの音がきこえる。

数日間続いた吹雪が嘘のように晴れ渡っている。

白銀の雪の照り返しで暑いくらいだ。

脱線した列車に乗っていた乗員は飢えと寒さで半数以上が

凍死したそうだ。麓と事故現場との中間地点にあるこの僧院は

この数日の間は取材陣の詰め所として賑わうのだろう。

さきほど東洋人の青年が逮捕されヘリコプターで護送されていった。

なんたること!外交官の私より、容疑者の彼のほうが先に下山するとは・・・

ともあれこのステッキの柄に隠された機密文書をブリュッセルの次官殿

に手渡すまでは努めて大人しくしていよう・・・

                       外交官  エルキュール・プラム

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る