第40話 ジュリアン
『ゾラ戦隊長、整備課からジュリアンがサボタージュを行っていると』
みなまで聞かず、宙に浮かぶマリンぬ船長の胸像に言い捨てる。
「ジュリアン?彼ならあたしの隣で寝ているわ」
『でありますか。格納庫B4ハンガーへ直ちに向かうようお伝え下さい。では』
あっ、切れた……ちょっとリアクションが欲しかったんだけど。
隣に横たわる男の寝顔を見つめる。
長い金髪に隠れた彫の深い顔、閉じられた瞳。
色の抜けた長いまつげが白い羽根の様に閉じている。
「美しい…」
自分の口が勝手に感嘆を漏らす。
その白い顔と寝息に、20時間前、艦内通路ですれ違い様に迫られた時のことを思い出す。
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「・・・!ゾラ!!おい、転進とはどういうことだ!?ヴァルナを、ユーミを見逃すのか!」
体ごと壁ドンされ、イイ位置から見降ろされときめいてしまったのが運の尽きだった。
「だったら何?この船はあんたの都合で動いてるんじゃないんだけど」
「クソ、ここで逃したら・・・おい、俺の都合を優先しろ!」
「・・・弱肉強食って知ってる?言うことを聞かせたかったら、あたしを殴るなり犯すなりで蹂躙して征服するコトね」
「チッ、おまえまだガキだろ?!男舐めてそんな小さなカラダ開いたら・・・」
「おあいにく様。あたし、そういう兵科なの」
ジュリアンを押し離し、背を向け歩き出す。
「そんな心配されなくたってもう、ズタズタに汚れ切ってるわ。・・・こんな汚いカラダで誘っちゃってゴメ・・・」
頭の中、雪山で犬と一緒に冷たくなってゆく少年の童話を思い出しながら貯めた涙で振り返ると、セリフを言い終わる前にカレはあたしを柔らかく抱きしめ、言ってくれた。
「汚くなんかねえよ、・・・お前は美しいぜ。証明してやる」
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そっからもーアレよ、ぬっぽぬっぽのぐっちゅぐちゅでめくるめくナニのうちに20時間が経過して今に至るってワケ。
「コイツ、優しいんだ・・・」
行為中の色々を思い出し顔がのぼせてしまう。
そっか、今までの女たちもコイツに全てを・・・はっ?!
一気にのぼせた頭が氷を詰められたように冷えてゆく。
ひょっとして・・・いや、もう完全完璧に今の一瞬、パピプッペポ様を裏切ってしまっていた!
「おい!起きろ!」
びたびたとさっきまで鑑賞してた男の顔を叩く。
ジュリアンは怠そうに呻きながら身を起こす。
「・・・あー、なんだ・・・久しぶりによく眠れたぜ」
ブツブツ言ってるカレに落ちてたぱんつと下着を投げる。
「倉庫から呼び出されてるよ。B4ハンガーだって」
「・・・!やべえ、ありがとよっ!」
めたくそ元気にベッドを飛び出し、パンツとブーツでボトムだけ着装するとシャツとジャケを肩にかけ走り出て行った。
・・・うーん、身の軽いヤツ。
肥大したプライドだけのヘタレだと思ってたのに一々構いたくなるような吸引力を感じる・・・これが母性を引かれる、ってやつなのかなあ。
行為もむちゃくそ優しかったし。
再び頭の中にベッドでの彼是がぬぽぐちゅと再生され顔がのぼせてしまう。
つーか性行為を回想して恥じらいを感じるのって初めてじゃね?
今までは憎しみや恐怖、食後のような性の満足感。
そしてゲツに感じたどーしょうもない程の愛しさ。
あんだけ優しいんだったら、ユーミちゃんを紹介してもいいかな・・・などと、もたくたと化粧を落としながらカップリングを想像してみる。
あ、駄目だわ。
化粧を落とし切った、年齢なりのなんとも頼りない自分の素顔を見て思い出した。
あいつ、ユーミの家族殺してたんだ。
全員纏めて事象の地平の彼方へ・・・
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