青柳姉妹
「ええーと?」
「こんにちは、恭介くん」
恭介は、目の前で笑う「先輩」に戸惑っていた。
姫名とよく似ているけれど、姫名ではないようだ。
(噂に聞く、青栁先輩……!?)
姫名とそっくりな彼女が、恭介に何の用だろう。
心当たりのない恭介は、曖昧に笑い返した。
事の発端は、30分前。
恭介が颯汰と別れた後だ。
彼が想いを寄せるはなとのデートが今週末だと知り、服を買ったり作戦を立てた。
自信がなさそうに笑う颯汰を励まして、別れ、書店に向かったところで偶然出会したのだ。
彼女の隣に姫名はおらず、少し話をしようと誘われて近くのカフェに入った。
そして、今目の前にはマナがいる。
(まさか、マナ先輩とも話せるなんて、思わなかったな)
彼女たちと同じ中学に通っていたことは知っているが、校内でマナを見かけることはほとんどなかった。
「あの、俺に何の用ですか?」
「ちょっとね。恭介くんは、かなちゃんと仲良いよね」
「幼馴染なので。かなと知り合いなんですか?」
「中学の頃、部活が同じだったの」
「そうだったんですね。かなが言ってたような…えっ」
マナが知りたがっているのは、恭介とかなの関係性だろうか。
だが、同じ部活だったなら恭介とは幼馴染だと聞きているはずだ。
(どういうことだ?)
「実は、中学の時に付き合ってたんです」
「そうなんだ!じゃあ、今は幼馴染なんだね」
「はい」
「ふーん、そっか。ありがとう、恭介くん」
スマホを取り上げたマナが笑みを深くする。
その笑みにドキリとして、目を逸らした。
段々と早くなる鼓動に頭が追いつかない。
マナと話をしてから1ヶ月が経った。
5月も中盤に差しかかり、湿気を含んだ風が恭介の首を撫でる。
「うーん……何なんだ!?」
スマホを見つめて、恭介はため息をついた。
どういうわけか、この1ヶ月、姫名とマナからの連絡が途絶えなかった。
それだけ、恭介と話したいのだろうか。
ガシガシと頭を掻きながら、ここ最近感じている胸の痛みに気がついた。
(……マナ先輩とは、初めて会った気がしないんだよな)
玄関ドアに手をかけた時、何かが頭の中を過った。
断片的ではあるけれど、どこか覚えのある記憶。
(いつだ?これは、いつの記憶だ…?)
玄関に上がり、階段を登りながら必死に頭をひねる。
だが、激痛が走るばかりで思い出せなかった。
(一瞬、浴衣が見えたような……?)
この時、恭介は気がついていなかった。
青栁姉妹と関わることで、これからの高校生活が左右されることを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます