首都プラムディア

 クロウたちはこの国の首都プラムディアに到達した。


 商工業ともに盛んで、世界屈指の経済規模を誇る街だ。


 ちなみにこの国とは言ったがここはいわゆる「国家」ではない。指導者層がアウカトラズに皆殺しにされてからは国際同盟から国家の承認を受けていないのだ。


「おー街だ街だ。田舎道を歩き続けて二ヶ月か。我ながら頑張ったよ。頼りないリーダーを助けてよー。わはーははは!」


 スピードの言葉にクロウがかみつく。


「頼りないって誰のことだよ。自分だけじゃここまでたどりつけなかっただろうに。今日は飯抜きにすっぞ!」


「いえいえ旦那、あなたのことじゃございませんって。そういきりたつなよクロウ。取り敢えずなんか旨いものでも食おうぜ。はっははは」


 クロウはスピードを無視し、ロードに話しかける。


「ここは税金を取られないので世界中から富豪が集まっている。住宅街へ行って融資を持ちかけるぞ。世界平和を実現するには金が全然足りない」


 キュウリをかじりながらロードがうなづく。


「そうだな、それが肝要だ。しかしクロウよ。具体的な方策は持っているのか?」


「キュウリ食ってるし。水虎とか名乗っていてもやっぱり河童は河童だなぁ」


 ロードがスピードを睨みつける。


「河童じゃねーよ!水虎だ、水虎! この世で最も恐れられている、由緒正しい妖怪の一族だ!」


「顔が怖いから恐れられてるのよ。戦っている最中に白髪のおじいちゃんになっちやうし」


 ちゃちゃを入れるズズにゆがんだ笑みを見せるロード。


「まぁとにかくその話は置いといて、住宅街へ急ごう」


 住宅街に着いたクロウ達は手分けをしてしらみつぶしに高級な家をまわっていく。


「なんか金貸してくれーって言ったら断られるぞ。無理だ無理」


「お前の言い方が悪いんじゃねーかよ。融資していただけませんかって言うんだよ。ばーか」


「ふん。じゃあクロウとロードだけででやれよな。そもそも俺ら関係ねーし」


 クロウが反論する。


「違うよ。お前らの飯や、宿屋代だっていうの!」


「そんなものに3000万ギルもいらねーだろ」


「もういい。人に聞く」


 犬を連れた散歩中のマダムに聞く。


「お金持ちねぇ。ここの人は全員お金持ちだから。あっそうそう。シェルラさんのとこは別格の富豪って話よ。この通りの角がシェルラさんのとこよ」


「よしっそこを攻めるぞ」


 角の家についた。バカデカい邸宅だ。こわごわ中に入るクロウたち。


 玄関に着いた。そこには呼び鈴ではなく、なんと寺院などにある鐘が。


「俺が打つ」


 スピードが前に出る。そして思い切り鐘をつく。


 ゴーン


 するとす〜と玄関が開く。どこからか声が。


「入りたまえ」


 なにやらおどろおどろしい声が聞こえる。


「入るな!」


「なぜ?」


「アウカトラズの幹部の家だ」


 スピードが反発する。


「意外なことを言うな。お前、アウカトラズをぶっ潰すつもりじゃないのかよ?」


「そ、そりゃそうだけど……ま、いい。俺の世界平和への構想を少し話そう。『警察』を復活させるつもりなんだよ。まず俺の生まれ故郷『カランディス』の無法状態を警察を組織化する事によって犯罪の発生を鎮めていく。うまくいけば世界にその組織化のノウハウを世界に……」


「あー、もう! 面倒くさい事言ってんじやねーよ。行くぞ!」


 ずかずか入っていくスピード。みなも無言であとに続く。


 しばらく屋敷の奥へと進む一行。その時また声が。


「そこを左に行くと応接間につく。しばらくくつろいでいたまえ」


 言われた通りにドアを開けるとソファーがあった。みな深く沈む高級なソファーに腰掛ける。


「うっ、なんだこのニオイ。すげー、くせー!」


 スピードが眉をひそめる。


「阿片だ」


 ロードが冷静な顔で言う。


 その時、ドアの鍵を閉める音がした。


「なによ!」


 ズズがドアを開けようとしてもどうにもならない。


「マジか。閉じ込められたぜ!」


「罠にかかったというところか……」


 なんとなく絶望的になるクロウたち。このニオイを嗅いでいると酔うような感覚を覚える。


「リーダーはクロウ君だったね。ようこそ」


 クロウが吠える。


「俺たちを閉じ込めてどうするつもりだ!」


「一人づつ隣の部屋へ入ってきたまえ」


「質問に答えろ!」


「中に入ったら分かる」


 様々な選択肢を考えているクロウ。煮詰まった顔を見透かすロード。


「考えすぎるな。クロウ。相手の懐に飛び込むしかない」


 ロードの言葉には妙な説得力がある。何百年も生きている経験からくる言葉だ。


「頑張って、クロウ」


 ズズがそっと励ます。


 クロウは黙って立ち上がり、反対側のドアを開けた。











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