富豪のボディーガード
クロウ達は高級住宅街を歩いている。
「金持ちばっかじゃね。ところでクロウはなんでこんな高級そうな所を歩いてるんだ」
「市長さんの家があるんだよ」
スピードがすっとぼけたような顔をする。
「まぁ、ついてくれば分かるさ」
クロウがメモした地図と周辺を確認している。
横の鈴を鳴らすひもをゆさぶり来訪を告げる。
しばらく後に長身のやせた男がでてきた。
「やま」
クロウ達は戸惑うだけだ。
(なんだか暗号のようなものか?)
(分からない。全くそんな情報持ってねーぞ)
すると門があいた。何も言わないが正解だったようだ。
「今日は何の用で来た」
クロウは少し頭を回転させる。
「市の財政についてのインタビューだ」
「社員証は」
「持ってない。フリーの記者だ」
しばし考える長身の男。玄関をあごで指し示す。
喜び勇んで玄関から入る二人。スピードがいない。門の方を見て驚いた。さっきの男とガンの飛ばしあいをしている。
クロウがスピードの襟を引っ張ってやっと玄関に到着。麦茶が振る舞われ、ほっと一息つく。
「わかんねー。お前がわかんねー。なんでガン飛ばしてたんだ。ケンカになったらどうするんだよ!」
「そりゃおめー、ボコボコにするだけだ」
「もう、そういう子どもみたいな態度はやめてくれよな」
「むこうの出方次第だな」
「穏便にたのむよ。もう、本当」
ドアが開きクロウだけが呼ばれた、
「えー?あたし達はー」
「待機だ」
「えーべーふん」
クロウは豪華な応接間にいる。一時間ほど経ったであろうか。ドアを明け帰って来た。
「やったぞ、3000万ギルだ」
「ん? 何が」
「ここの市長のクレードさんが3000万ギル融資してくれたんだよ!」
スピードはマヌケな顔をしながらズズを見る。ズズはさらにマヌケ声で「お金の話〜?」と完全に他人事。
(オメーら食わせていくゼニじゃねーかよ!)
「ふぅ、ほら立って立って」
「ど、どんな話をしたら3000万もくれるの? さ、詐欺……?」
「んなけねーだろ!!!」
いきなり大声を出して、口を手でふさぐクロウ。
(このエロ痴女め!)
やっと玄関から外へ出た一行。ボディーガードの男がドアを引いてくれた。
「まずはラーメンだな」
「いやん、焼き肉よ」
と、下らぬ議論を始めたその時!
ヒタリ
クロウの首スジに冷たい剣の抜き身が当てられる。
「クロウとやら、覚悟しろ」
その抜き身を横一閃。しかしそこにクロウはいない。
「さっきの話。カンが強いというが、どれほどのものか見せてもらいぎゃうわー!」
口上の途中で横に吹っ飛ぶ男。
スピードの中段横蹴りが脇腹に決まったのだ。
「男と男の勝負に他の奴が口を出すんじゃねー!うう……脇腹折れたぞ。くそ! 裸に革ジャンってだせーカッコしやがって」
「それくらいで済んで感謝しろ。ターコ。俺はクロウのボディーガードだ。甘く見ていちゃケガするぜ」
そこにクロウが現れる。
「俺の言葉が信用できないのなら、受けて立とう」
「本気だな」
「もちろん」
「この剣は本物だぞ」
「真剣になってやれる」
剣を逆手に持ち、体を縮める。
「クロウ頑張れー!」
クロウも構えながら言葉を発する。
「名をなんと言う」
「ロードだ」
「貴族……が名前か?何の事だ?」
「知るか!俺のふたつ名だ。お前に本当の名など口にする義理はない!」
シー シー
構えながら妙な呼吸をしている。警戒するクロウ。
「俺の剣を10本よけてみせたらお前のカンを信用してもいい。まいる!」
いきなり突いてきた。しかし難なくよけるクロウ。重い両手剣なのでよけられたあとの動きがにぶい。
やっと構え直したらそこにクロウはいない。
パン!
後ろからいきなりはたかれる。
「おのれ!」
その一発でロードの顔色が変わった。
クロウに一剣一剣、本気で斬りにいっている。
しかしクロウのカンの敵ではない。クロウはひらりひらりとかわしてまわる。
「最後の一本だ!」
その言葉にロードは剣を順手に持ちかえる。
「きぇーい!」
上段に構えたのを見て取ったクロウは中に入り前腕を押さえる。
「これでどうた」
動きが取れないロードが目をむきながら顔を縦に振る。
「みごとだ」
ロードの目玉を見てクロウは仰天した。黒かった目の色が輝く翡翠色になってたからだ。
「うわっ、なんだお前、妖怪のたぐいか?」
ロードが低い声でクロウに告げる。
「そうだ。人間ではない。人は俺の事を『スィーフー(水虎)』と呼ぶ。俺の一生は殺戮の連続だった。俺はもうすぐ寿命がきて死ぬ。その前にやっておかなきゃいけない事がある」
「寿命って、あと何年なんだ」
ロードが指で数を数えている。
「あと50年ぐらいだ」
「十分なげーじゃん」
「俺たちの種族では短い。もう、そんな話はどうでもいい!俺はな、夜一人のばーさまと話をしている夢を見た。これからある三人組と出会うと。その者共は西へ旅をしていると。その一行に加われと。旅の終着点で贖罪をするのだと」
クロウがゆっくり首を縦に振る。
「お前もおババに導かれし者か。仲間に加われ」
ロードが初めて笑顔になった。
「貴族!こやつが?だはーはははー!」
クロウが密かにスピードに近付く。
(ケンカしたらクビだかんな。お前)
「そりゃーないでしょう、旦那ー」
ズズがこそっとクロウに耳打ちする。
「ちょっといい男かなと思ったけど前歯が出てるわね」
(このエロ女が!)
「まぁとにかくなにかの縁だ。俺たちはチームだ。しまって行こうぜ!」
「オー!」
クロウとズズだけが笑顔で拳を天に突き上げた
。
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