第二章 銃と仲間をゲット! なのに相方が聖剣・魔剣に夢中で草
第8話 大精霊ウニボー
銃を手に入れたはいいが、謎のモンスターがオレたちの前に現れた。白くて耳の長いネコである。体毛が多く、フサフサモフモフと言うかモジャモジャに近い。
オレとモモコは、一斉に銃を構える。
「待つモジャ! オイラは敵じゃないモジャーッ!」
「何者だ」
「えっと、クニミツと、モモコだったモジャ?」
なぜかモンスターは、オレたちの名前を知っていた。
「怪しい」
「やっぱり斬る、クニミツ?」
再度、オレたちは切っ先をモンスターに向ける。
「敵じゃないモジャーッ! オイラは大精霊ウニボーだモジャ!」
「大精霊、ウニボー?」
まるで西洋精霊の「ブラウニー」と、東洋精霊の「コロボックル」を足したような名前だ。
「お前たちが呼んでいた、精霊のボスだモジャ」
オレたちの家や居住領域をキレイに保ってくれていた精霊には、親玉がいたらしい。
「その節は、精霊たちをお腹いっぱいにしてくれてありがとうモジャ。みんな喜んでいるモジャ」
「私たち、なにかしたっけ?」
「モモコが、お花の蜜をくれているモジャ」
オレとモモコは向かい合って、「ああ」とため息をつく。
モモコは「精霊に手助けをしてもらう」と、花を生成しては植えていた。
「あれは単に、花は雑草から錬成できるから作っただけ。ポーションや火薬の材料にもなるし、武器にも薬品にも変わるから」
「それでも、ありがたいモジャ。前の住人だったノームはムダに魔力が高かったから、精霊をあんまり大事にしなかったモジャ。そっちのクニミツは、お供えをくれたモジャ」
大精霊ウニボーに言われて、オレも理解する。
「そういえば、神棚作ったんだよな」
木材が余ったので、気まぐれで精霊への感謝を込めて神棚を作ったのだ。
そこに毎日、握り飯やおはぎをお供えをしていた。
翌朝にはお供えがなくなっていたから、精霊が食ったのだろうと思っていたが。
「あれはうまかったモジャ」
「いや、そういうもんだと思っていたから。当然だと思っていた」
異世界だから、割とそんなものなのだろうと考えていただけなのだが。
「クニミツ、モモコ。ふたりとも、ありがとうモジャ。こんな優しい住人たちは、初めてモジャ」
ウニボーは頭を下げた後、本題に入る。
「で、オイラは本格的に顔を出して、お前たちを守ると決めたモジャ。仲間に入るモジャ」
なんと、ウニボーが仲間になりたそうにこちらを見た。
「ずっとここにいたのか?」
「そうモジャ」
「どうして、黙っていた?」
「先発隊に、偵察させていたモジャ。前のノームが、雑なヤツだったからモジャ」
よほど信用できない住人だったのだろう。
「家の中に大木やキノコとか生やして、追っ払ってやったモジャ」
どうもウニボーたち精霊は、割と過激な思想を持っているらしい。怒らせないほうがいいな。
「なんかさ」
モモコが、オレの袖を引っ張る。
「どうしたモモコ?」
「話を聞いている感じだと、そのノームって『この世界に住むための、アカウントが抹消された』って感じがしない?」
言われてみればそうかも。
「となると、管理者権限で存在を消された可能性が高いっていいたいのか?」
「そんな気がする」
このモジャモジャに、そこまでの管理権限があるとは思えないが、気にしたほうがいいかもな。
「迷惑なら、オイラは精霊の世界に帰るモジャ」
「どうするかは、もっと話を聞いてからにしたい。何ができるんだ?」
「お前たちが留守の間、精霊に家を守らせるモジャ。オイラは、ダンジョンの探索できるモジャ」
採掘や採集なら、手を貸せるだろうとのこと。たしかに見たこともないレア素材なら、欲しいかも。
「あと、ある程度のモンスターなら、弱点がわかるモジャ」
「それはありがたいな」
モンスター退治で生計を立てている関係上、弱点がわかるのは頼もしい。
「モモコは、問題ないか?」
「うん。精霊と話ができれば、相手が何を欲しがっているかわかる」
決まりだな。
オレはウニボーを仲間に入れた。
モモコのモーニングルーティンは、冷たいシャワーを浴びることから始まる。気合ととも「ヨシ」と言いつつも、寒がっていた。結局、温かいシャワーを浴び直すのだ。
理解できん。朝食を作りながら、オレは首を横に振る。
「おいしいモジャ。【フツカメノカレー】ってのは、こんなにおいしいモジャか? こんな味は、今まで食べたことないモジャ」
「お前、昨日食ったじゃん」
「昨日もおいしかったモジャが、昨日よりおいしいモジャ」
昨日食ったカレーを、また温め直しただけだけどな。
「ごちそうさまでした、クニミツ」
「オイラも、ごちそうさまモジャ。クニミツのお料理は、やっぱりおいしいモジャ」
朝飯を食い終わって、装備を整えたら出発だ。
オレたちは冒険者ギルドへ、依頼を探しに向かう。
「おお、クニミツと……たしかブラウ・ドラッヘ? だったか!」
大型の盾を背負った女騎士が、オレたちにあいさつをする。やっぱりモモコに関しては、疑問形だ。
「もう、モモコでいい。あなたは?」
モモコの方も、名前を覚えてもらうのをあきらめたようだ。思っていたより浸透していないのが、かなりショックのようである。
「申し遅れた。アタシはルイーゼ。ドリス様の部下で、クルセイダーだ」
クルセイダーとは、パラディンより防御面に特化した盾役だ。
ルイーゼは銀色のビキニアーマーに身を固めた、ダークエルフである。全体的に肉感的で、胸の強調がすごい。
「先日は、すまなかった。アタシの代わりにドリス様を助けてもらって。ドリス様のご子息を守り、先に帰す役についていたのだ」
「立派な仕事だ。今日は、なにかあったのか?」
「ご子息の病気が、まだひどくなってきた」
大変なんだな、ドリスさんのところも。
「魔王復活を企む闇勢力を追っているのだが、頼もしい冒険者がいない。アタシが単身乗り込むことも考えた。が、アタシが死ねば、ご子息を助ける者がいなくなる」
「魔王の残党狩りだな?」
「うむ!」
そこで、と、ルイーゼがオレたちに同行を頼んできた。
ドリスさんの息子を弱らせているのが、魔王の残党らしい。
「キミたち二人は強い。協力してもらえないだろうか?」
「オレは引き受ける。モモコはどうする?」
モモコは、人見知りだ。対処できるかどうか。
「やろう。子どもを狙う相手なんて、許せないよ」
それでこそ、モモコだ。
「で、どこへ行けば?」
「先に、子どもの治療をするモジャ」
大精霊ウニボーが、モモコの肩に乗っかる。
「お前は、精霊の王ウニボーではないかっ」
どうやら、ルイーゼも知っているらしい。
「そうモジャ。クニミツとモモコのペットになったモジャ。さっそく案内するモジャ」
ウニボーを冒険者のペットとして登録した後で、ドリスさんの元へ。
「ああ、大精霊ウニボーッ! こちらに戻ってきたのですね?」
「話は後モジャ。子どもの様子を見せるモジャ」
苦しそうにベッドで寝ている少年が、ドリスさんの息子だろう。
「少しでも元気にするモジャ」
ウニボーの身体が、ぼんやりとした優しい光を放つ。
少年の汗が引いていき、顔色もよくなってきた。
「治った?」
モモコが問いかけると、ウニボーは首を横に振る。
「安心はできないモジャ。根本的な治癒が必要かもしれないモジャ」
「そうなのです。息子を完治させたければ、敵は、ワタシの持っているムーンストーンを渡せと脅してきたのです」
ドリスさんは、首飾りを外してオレたちに見せた。
「これがムーンストーンです。これを邪悪なる者が手にすれば、魔王の封印が弱まるのです」
ひどいな。
「その手先ってのは、どこに?」
「ここから少し言った先のダンジョンです。最近になって、出現したのです」
今でも冒険者たちと魔物たちが、小競り合いが続いているという。その裏に、魔王の配下が絡んでいるとのこと。
「関連があるかわからないのですが、ルイーゼが戦闘中に、こういったものを拾いました。武器のようですが、ルイーゼにも使い方がわからなくて」
オレたちは、二丁の武器をドリスさんから受け取った。
「クニミツ、これって!」
「ああ」
……これは、銃だ!
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