夜
佐原マカ
夜
夜はとても怖いし、淋しい。父や母の隣で眠りたいけど、私はもう高校生なんだ。
学校はとても寂しいところに感じる。先生はもはや機械のようにしゃべっている。電車の中に元気な人は一人もいない。そして、日中感じていた寂しさが夜になるとより強く出てきて、溶け込めなくなる。
小さい頃は天井のシミやその皺を数えたり、そこから物語みたいなのを作った。すると、それは夢の中の物語へと繋がり、気が付けば朝の目覚ましが鳴って、一日の始まりに変わる。あの頃は目覚ましの音が嫌じゃなかった。
今は暗い夜に豆電球の明かりの中、天井を見ても、眼鏡を外した私にはオレンジ色の光が広がるただの壁にしか見えない。夢もあんまり見れなくなった。あのころの楽しさはどこにいったのかなぁ。あのころの純粋さはどこにいったのかなぁ。
ぐるぐると思考が巡る。「素直でいたい」と願い、たくさん考えるけど、その思考がすでに素直じゃないことに気づく。「自分らしくいたい」「自分らしさは何だろう」と考え、何かを見つけ、それを習慣にしても、私は素直じゃないから段々しんどくなって、せっかく見つけた私らしさは一週間くらいで終わる。
自分を肯定できるようになりたい。でも、ちゃんと苦しくなって、死にそうになってしまう。それでも、真っ暗な夜に溶け込めないときのベッドの中では、私はちゃんと現実逃避できていて、それが自分らしさのような気がする。もしそうなら、私はとても弱い人間だ。
ちゃんと逃げることはできるから、逃げられない可哀想な子にはなれなくて、集団の中に埋もれながら、選択を繰り返してきた。けれど、こんなに苦しいなかで、埋もれたままで、自分らしさなんて見つかる気がしない。
だから、私は極端に人間になろうとしている。最近、極端であることに価値を、希望を感じているような気がする。だって、極端じゃないと自分が何者か分からなくなる。自分がどんな人間か、他人に説明できない。
その他大勢に飲み込まれ、行ったことはないけれど、東京のどこか、人で溢れる坂の流れのような、いや、改札のような場所にいるみたいに。私は、流れる水の一粒で、いなくても何も変わらない。でも、そこに埋もれたままだと、結局「なんで生まれてきたんだろう」って感覚になる。
私に優しくしてくれるのは、私が高校生だからでしょう。制服を着ているからでしょう。みんな、私のことなんか見ていなくて、そのレッテルというか、ブランドというか、格好を気にしている。
その制服を見て目の色を変えている電車の人の前で、それを脱いで本当の私を見せてみようか。どんな反応をするかな。きっと逃げ出して、「この人は普通の高校生じゃない」と思う?
普通って、どういうこと。普通でいないといけないのに、自分らしくいないといけないって、矛盾してる。だから私は後者を選択して、生きていくんだ。明日、これを決行しよう。よく目が合うあの人が、どんな顔をするか気になる。
ディズニーのキャラクターを見て、無条件に「可愛い」と言える人の気持ちが知りたい。無条件の感覚が欲しい。いや、無条件の肯定が欲しい。きっと無条件の否定は身についているから、私は無条件の肯定が欲しい。
捨てた方がいいのかな?身体とか、感情とか、私のすべてを。
殺人でもなんでもいいけど、どこか一つ踏みとどまれずに超えてしまったら、私はもっとこの世で輝けるかもしれないし、そのとき、周りの目線が気にならなくなるような気がしていて、そんなことをしちゃったという想像だけが、今の私を夜に溶かしてくれる唯一の希望なんだ。
夜 佐原マカ @maka90402
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