41話

 そして数日が経ったときタルザナは全くと言って良い程に眠れていない。顔色の悪い顔を化粧で隠しいつ通り皆の授業と執務、そして結婚の準備をしていた。本来であれば、嫁入り修行をするのだが、タルザナは事前にそれを済ませていたためする必要がなくなった。タルザナは眼が回るほどの目眩に襲われながら堂々たる足取りでカイヤのいる執務室に向かった。最近はカイヤとタルザナ、ファトールの三人で執務室に缶詰めなのだ。そして3人で仕事をしているとタルザナの体がふらふらとしていることに気づき、カイヤはさり気なくタルザナの隣りに座り仕事を再開する。今の状態でも休むように言っても聞かないと察してのことだろう。ファトールはカイヤの意図を察して二人に紅茶を出した。だがタルザナは集中をしすぎてそれに気づいていなかった。カイヤは、優しい表情で優しくタルザナの肩を叩いた。タルザナはそれに気づきカイヤの方へ向く。

 

「タルザナ、ファトールが紅茶をいれてくれたから一度休憩しよう」

 

「そうなんですね。ありがとうございます。ファトール」

 

 と言いながら微笑み、タルザナはやっと仕事の手を止めて紅茶を飲む。タルザナの所作は美しく完璧だったが紅茶を飲んだ瞬間、明らかに気が緩んだ様子を見せた。今までで張り詰めていたのだろうと二人は察しながら紅茶を嗜む。ファトールは他の使用人達にあることを耳打ちすると使用人達は嬉しそうに部屋を出て行った。タルザナとカイヤは首を傾げながら紅茶を嗜むすると、使用人達がぞろぞろと部屋に入って来た。二人は驚きながらそれを見つめていた。するとヒスイが口を開く。

 

「お二人共、残りの仕事は私達に任せてお二人でお休みになったらいかがですか?」

 

 ヒスイが満面の笑みで言う言葉に使用人達が笑顔で頷いた。使用人達曰く、ずっと部屋に缶詰めで一切気晴らしをしていない二人に楽しんでほしかったらしい。タルザナは「皆が頑張っている中で私が休む訳には……」と遠慮をしている様子だったが、カイヤがタルザナの肩を優しく触れながらタルザナに声をかける。

 

「せっかくだから、皆に甘えよう。丁度、息抜きがしたいと思ってたからな。……それに、たまには君と出かけたい」

 

「へ、陛下…分かりました。じゃあ、出かけましょうか」

 

 と嬉しそうに微笑みながらタルザナは皆に引き継ぎをして準備をするために部屋を出た。するとカイヤの喜ぶ声とファトール達の祝福の声が聞こえてきた。その声たちを聞いてタルザナは

 (現世は人に恵まれたな)

 と、嬉しそうにしている人達を横目にそっと部屋を出た。

 そして準備を終えたタルザナが部屋に戻るとカイヤが待っていた。タルザナは小走りをして

 

「おまたせしました。では、行きましょうか?」 

 

 と微笑む。するとカイヤが柔らかな微笑みで「あぁ」と言いながら優しくタルザナの手を繋ぐ。タルザナは顔を背けながら口を開く。

 

「へ、陛下…みんなも見ていますし」

 

「ほう、なら…見せつけてやればいい。俺達の仲の良さを…」

 

「……シバいますよ!」

 

 と言いながらタルザナはカイヤを軽く叩く。カイヤは愛おしげに微笑みながら

 

「もうしばいているじゃないか」

 

 と笑っている。そんな二人を見て使用人たちは(ほんとにタルザナ様は愛らしい)とほっこりしていた。タルザナはそんな使用人達を見て恥ずかしくなったのか「では、行ってきますわ!」と足早に歩いて行く。だが、タルザナは品ある立ち居振舞いだった。そんなタルザナを「ちょ、ごめんて」と言いながらタルザナを追いかけるカイヤ。そしてファトール含めた使用人たちは同じ考えをしていた。

(あぁ、これは陛下はタルザナ様に尻に敷かれそうだな)

 と。

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