38話

 ファトールはそれを受け取り立ち上がる。そして、ファトールは苦笑しながらタルザナに声をかける。

 

「なかなかいませんよ。そんなに部下の剣を丁重に扱いながら目線を合わせて返す律儀さを持ち合わせる女性は」

 

「あら、忠誠を誓ってくれた従者を大切にしては駄目なのかしら?それに、この国は礼儀も大切でしょう?その国の王妃となるなら、従者だろうが使用人だろうと…国民だろうと…この国の人間達を大切にするのは当たり前、そうでしょう?カイヤ陛下?」

 

 と言いながらタルザナは朗らかに微笑んだ。カイヤはその表情に驚きながら「そうだな」と優しく微笑む。タルザナはその言葉を聞きファトールに向き直り朗らかな声色で言う。

 

「ほら、この国の王様はそんじょそこらの国王や貴族達とは一味も二味も違うのよ」

 

 タルザナは嬉しそうにそして誇ったような表情をする。その表情は無邪気で楽しそうな物だった。二人は驚いた。それは冒険者ロゼとしての表情だった。それがタルザナの素だと知っているカイヤはタルザナに微笑んだ。一方で、タルザナの表情を見て言葉を失うファトール。

 

「……どうかしたの?二人とも」

 

「いや、敬語がなくなっているからファトールが驚いてるのが面白くて」


「あ、忘れてた」

 

 タルザナは、バツが悪そうに苦笑した。その言葉を聞きファトールは、今までで聞いたことのない程の大笑いをした。タルザナは目を見開き驚いたが、カイヤは慣れたような表情をしていた。

 

「タルザナ様、おもろすぎだろ。カイヤ、流石だな。やっぱりお前は人を見る目あるんだな!」

 

 と言いながら腹を抱えてカイヤの肩に手を置き笑いすぎて肩で息をするファトール。タルザナはカイヤの慣れた表情を見てファトールの素だと察した。するとカイヤはタルザナの腰に触れ優しく…そして確かな力で抱き寄せる。

 

「そうだろ?でも、俺だけの力で彼女を選んだんじゃない。俺は彼女に選ばれたんだ」

 

 と言いながら誇らしげに微笑むカイヤ。その表情は、いつもの冷たい微笑みではなく暖かく優しいタルザナと二人きりのときいつも見ている物だった。それを見たファトールは、どこか安堵した表情をしながら頷いた。二人の様子を見たタルザナは口を開く。

 

「さて、私の素をファトールにも知られた所で…二人の関係も教えてもらおうか?」

 

 と言いながらタルザナは、ドカッと豪快に椅子に座る。その振る舞いは先程までも上品さはなかった。ファトールはそのギャップにより一層タルザナに強い信頼を寄せることとなった。カイヤはそんなタルザナを見て苦笑しながらお小言を言う。

 

「全く、そういう割り切るのが早いのも君の良いところだが、割り切るのが早すぎるというもの考えものだ」

 

 と言いながらカイヤはタルザナのドレスが少しめくれて足が見えている部分を直す。ファトールはさり気なく目を逸らしていた。そんなファトールの紳士さにカイヤとタルザナは苦笑する。そしてカイヤとファトールは話し出す。自分達の関係とその過去を…。

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