お見合い(代理)から始まったはずなのに、なぜか行き着く先は“飯”。
魔導師アリアとエリート騎士アドルファスが、食べることをきっかけに絆を育んでいく物語です。
アリアの所属する第二魔導部隊。
料理に全力な部隊員たち……魔導師集団とは思えないほどの食への熱量が本当に楽しい。
魔獣の肉だろうが野草だろうが知識を駆使して本気で調理!
豪快さと美味しさの描写に、読んでいるこっちまで「食いてぇ!」と叫びたくなる。
そんな賑やかな空気に、気づけばアドルファスまで溶け込んでいて、所属が違うのに気が付けばすっかり仲間扱い。
アドルファスとアリアの掛け合いはもちろんですが、こういう同僚、友人などの関係性まで丁寧に描かれていて、そういう人間模様がたまらなく好きです。
なお、本作がきっかけで夕飯のメニューが影響を受けたこともございます。
その体験を添えて、おすすめの言葉にかえさせていただきます♪
くそう、料理への描写が食材の見せ方から調理工程、食事シーンに至るまで、一つ一つがすべて丁寧なので実に解像度の高い情景が浮かんでくる……!
こんなの腹が減るに決まってるんですよ。
そして話の中核にいつも飯が出てくるので、常に誘惑が目の前にぶら下がった状態になるのです。
拷問か?
それにしても、食への煩悩に振り切りすぎた作中の皆さん、大丈夫なんでしょうかね?
いや、ちょっと大丈夫じゃなさそうな描写もちらほら……どころか、結構散見されますねこれ?
でもその緩やかで平和そうな雰囲気がたまらなく癒されます。
勿論、少しだけスパイスとばかりにシリアス要素も、ほんとにほんのりと匂わされていますが、大筋を邪魔するような要素になっていないのが実にストレスフリーでよいですね。
ひたすらに満たされたい気分になりたい方は、是非ともこちらの作品をお読みください。
最悪の見合いだった。
料理は不味く、空気は重く、女は黙々と食い続け、男はただ呆れていた。
だが、食後に放たれた一言が、すべてを変える。
「遠乗りしましょう。今すぐ。本物の味を、食べたいの」
見合いの席から始まったのは、
茄子を摘み、焚き火を起こし、魔法で煮炊きする。
奇妙で、豊かで、心をほぐす『ごはんの冒険』。
完璧な王宮騎士と、ズレた魔導師の出会いは、
政略でも任務でもなく、「うまい」の一言から始まる。
茄子の揚げ浸しに頬をゆるめ、
魔鹿のローストに泣き、
手作りジャムに人生を癒やされる。
ここは王都。
でも、魔法が世界を変えるんじゃない。
たった一皿の料理が、誰かの価値観を変えていく。
騎士団の泥臭い任務と、魔導部隊の自由すぎる日常。
その間に挟まれた『食卓』は、今日も静かに続く。
恋とも違う、任務でもない。
これは、美味しさから始まる物語。
見合い相手(?)の魔導師の女性にうっかり胃袋を掴まれてしまった、諜報部隊の騎士アドルファス。日頃の激務でまともな食事にありつけていなかった彼は、いつの間にか彼女の所属する魔導部隊にお邪魔しては出来立て料理のご相伴にあずかる日々を送るように。
初手が茄子なのですが、茄子の揚げ浸しの描写が思わず喉をコクリと鳴らします。とろっとろで、味がしみて、とっても美味しいのだろうなと至福の想像ができます。
何よりみんな、食レポが上手い。すごく食べたくなります。ご飯だけだなく、調理の過程すら丁寧で、いやこれは絶対美味いでしょ、って言いたくなります。
2人の関係性も気になりますが、これからもどんな美味しい料理が出てくるか、楽しみです。