パーティーを抜けた精霊術士は、
「── ふう、ここまでくれば大丈夫かな?」
ワイバーン達を一掃した後、僕はダンジョンを5層くらい下りたところで一人、そう呟いていた。
「それより、今まで我慢させちゃってごめんね?」
僕がそう言うと、
〈そんなことないよ!〉
という声と同時に、僕の周りに五人の小さな少女が姿を現す。
〈今までの鬱憤もさっき晴らせたから大丈夫。〉
と青い髪と瞳の子 ── クーが言えば、
〈そうそう。それに、あの顔も面白かったしね〜。〉
〈呆気に取られてた。痛快。〉
と、翠の髪と瞳の子とオレンジ色の髪と瞳の子 ── エルとアスが同調する。
「……それでも、我慢させちゃったのは事実だし……。」
と僕が言うと、
〈……あんな人達のこと、気にすることない、です!〉
と、薄紫の髪と瞳の子 ── ライが言葉を返す。
「……ありがと。……でも、これからどうしようか?」
パーティーは抜けたから、今の僕には正直やることがない。今まで我慢させちゃった分、しばらくは皆の自由にさせてあげたいんだけど……。
僕がそんなことを考えていると、
〈それなら、ユーリに会ってほしい人がいるの!〉
と、赤い髪と瞳の子 ── レイが言う。
「会ってほしい人?」
〈うん!前からそうだったんだけど、忙しそうだったから……。〉
「それで、その人はどこに?」
〈このダンジョンの、奥の方!〉
── ダンジョンの奥にいる?となると……普通の人じゃないのか?でも、皆が変な人に会わせるわけが無いし……。
「うーん……。……まあやることもないし、向かってみようかな。」
しばらく考えたのち、僕はそう決断する。
〈やった!こっち!着いてきて!〉
僕の言葉を聞き、レイ達が僕を案内するようにダンジョンの奥へと向かっていく。
「はいはい。」
僕は苦笑しながら、その後を追うのだった。
── 数時間後 ──
「おかしい。モンスターが強すぎる。」
数時間後、僕は一人そう呟いていた。
あれからダンジョンの奥へと進んでいった僕だけど、その間に戦ったモンスターの強さに違和感を覚えていた。具体的には、強すぎる。
僕が今いるのは、第四十二階層。確かに結構深いところではあるけど、ベテランなら
〈確かに、おかしいね……。〉
〈しかも、なんか嫌な感じもする。〉
〈何か異常事態が起きてるのかもね〜。〉
「異常事態……。
僕は皆に、思い当たったことを聞いてみる。
〈異常発生かー……。〉
〈確かにそうかも。〉
「うーん……。……とりあえず、みんなに協力してもらって探っていくしかないか。」
僕はそう言って、手元に魔力を集める。すると、僕の手元に大小様々な光の玉が集まってくる。それらは僕の魔力を吸い取ると、喜んでいるかのように僕の回りを飛び回る。
「いきなり呼んじゃってごめんね?でも、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。どうもこのダンジョン、何か異常なことが起こってるみたいなんだ。だから、何か見覚えのないものがあったら教えてほしいんだ。」
と僕が言うと、わかった!と言わんばかりに光の玉は大きく動き、散り散りに飛んでいく。
「……とりあえず、これで原因は探れるかな。それで?会わせたい人って……」
僕がそう聞き終わるより早く、さっき飛んでいった光の玉のうちのいくつかが僕の元へ飛んでくる。
「もう?……!それ、ほんと!?」
想定以上の早さで戻ってきた彼女たちに驚きを隠せない僕だったが、そんな思いは報告を聞いた瞬間吹き飛ばされる。
「はっ?!しかも、ひとりで戦ってる!?……案内お願い。」
僕はそう言って、ダンジョンの奥へ進んでいく光の玉の後を追うのだった。
── リア 視点 ──
「ぐっ!?」
防御の隙間を縫って私に叩き込まれた攻撃に、私は思わず呻き声を上げる。
── 内臓がやられたかも……?だけど、まだ動ける。それに──
私は身体を焼く毒の痛みも普通なら倒れるような打撃痛みも無視して、目の前に君臨する巨体を睨みつける。
どんな光も吸い込んでしまいそうなほどの漆黒の鱗に、細い瞳孔の黄色い瞳。口元から垂れた液体は地面を溶かし、周囲の地面はぐずぐずになっている。
そしてその三つ首が咆哮を上げ、私に向け
【一定以上のダメージを確認しました。"不老不死の呪い"が発動します。】
それを合図にしたかのように、私の頭にそんな声が流れ、私の体が一瞬で再生する。
── これで、まだ戦える。皆が助けを呼んでくれるまで、私がここで……!
再び体が動くようになったことを確認し、私は再び三つ首の毒竜 ── ヒュドラを睨む。
── 刹那、視界を埋め尽くす強い光と轟音と共に、ヒュドラの首が一つ吹き飛ばされる。
「きゃん!?」
普通の人より目や耳が良い私は、その音と光に思わず素っ頓狂な声を上げる。
── 誰……?もしかして、皆の呼んでくれた……?
そう考えた私がようやく見えるようになってきた目を開くと、背中まで伸びた紫がかった銀髪を一つにまとめた、翡翠色の瞳の男性がいた。その横顔は優しげで、凛々しさと若干の可愛らしさが共存している。だけど……。
── 銀髪……。
特徴的なその髪色にに昔の記憶を刺激され、少し荒れ始めた心を抑えていると、彼は
「── 危なかった……。君、大丈夫?」
と、私にそう声を掛けてくるのだった。
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