第3話 モテ伝説、バラされた日

朝、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。


「え……誰?この屋敷に訪問者ってあるんだ……?」

「俺も想定外だな……」


玄関を開けると、茶髪の男が片手にコンビニ袋を提げて立っていた。


「よう、悠真!生きてたか!! 連絡無さすぎて死んでんのかと思ったぞ」

「……陽翔かよ。なんで住所バレてんの」

「お前の親が教えてくれた。ストーカーかって?愛だよ愛」


さっそく押しかけてきた陽翔を居間に通すと、やたらと楽しげに喋り始めた。





「でさ、これ、例の女子たちから。『悠真くん最近どうしてるの?』って聞かれまくってんのよ。

高校のときなんて、隣のクラスの3人同時に告白してたの覚えてる?」


「……そうだっけ?」

「そうだっけ、じゃねぇ!顔よし頭よし家柄よしであの無自覚ムーブは殺しにかかってたわ」


(女子の手作りクッキーとか渡されて、普通に『あー、ありがとう。誰かにあげるね』って言ってたやつな)

(そりゃ泣くわ……)


居間の隅。姿をぼかしていた蓮は、うっすらと電波障害のように体を震わせていた。


「……3人同時……へぇ、そうなんだ。ふーん……」


(なに、女?女が3人も同時に?悠真の何がそんなに……)


どす黒い気配が漂い始め、気温が数度下がる。

照明がチラッと明滅し、陽翔が首を傾げた。


「ん?今、なんか……寒くね?」

「そうか?古い屋敷だし」

「いやでもなんか、視線?空気?気のせいか……」



その瞬間──


「……はぁぁ!? なにが顔よし頭よしだよ!! モテるとか知らないし!!」


怒鳴り声と同時に、蓮が完全に実体化して登場。

うっかり登場してしまった蓮は、一拍置いてから自分のミスに気づく。


「──っ!うわっ、ばっ、バレるっ……!!」


一方陽翔、ぽかんと目を見開いた。


「……お前、誰?てか、いつからいた!?」

「え、えっと……近所の……あの……通りすがりの……」

「住んでるけど近所の!? えっ!?」


陽翔が混乱してる中、悠真はすっと立ち上がって蓮の肩をぽんと叩いた。


「こいつ、ちょっと縁があって一緒に住んでる。あんまり突っ込むな」

「えっ、ルームメイト!? え、まさか、こいつが好きとか──」

「それは俺が決めることだろ」


「…………っ!!」


蓮、顔真っ赤。実体化しすぎて、もはやただの“生きた人間”みたいな温度だった。


「ヤキモチ焼くと、こんなにあったかくなるんだな」

そう思いながら、俺はまだほんの少し震えてる彼の手を、そっと握った。

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