人斬りの剣が無言の白に還る物語
- ★★★ Excellent!!!
忠義だけに生き、承認欲求のまま人斬りを行って来た以蔵が、志士たちそれぞれの思想に理解が追いつかず、翻弄され、漂流の果てに行き着いた先は女性とのささやかな暮らしだった。
彼はそこで人間としての感情を抱き、捕まり、獄中で師・武市と再会する。そして彼は、その罪を全て背負う決断をする。
ここで初めて以蔵の武士道が確立し、それに気がついた武市が嘆く。この場面が実に切なかったです。
武市の『激しく嘆いた』の文が重く、心に刺さりました。
また、忠義を人間性にかえた以蔵の詠んだ和歌は、とても澄んでいて、静かに心に沁みました。
最後の2行はとても余韻を残す終わり方で美しかったです。
有名な坂本竜馬と時代を同じにして、このような物語があったことを知り、彼の生き様を誠実に、そして丁寧に書き上げられた作者様に、深い敬意を覚えます。
深く考えさせられる物語を、ありがとうございました。
(なお、純文学は苦手なので、解釈が間違ってましたら、ごめんなさい)