第一話 戦争
戦争について纏めようか。
イベン王国とサスペンダー王国との戦い。この戦いは、今から約三六年前に勃発した。サスペンダー王国は自国の王、エラン・ジャックの活躍により大進撃を行って、イベン王国の三分の一の領土を奪い取っていった。そこにイベン王国の当時の国王(今の王の父親)アーサー・ザージバルによる反抗によって、領土をほぼ完全に奪還この後、停戦条約を締結した。そして今から二年前、国王アーサー・ザージバルが崩御した頃を見計りサスペンダー王国は攻撃を開始。一気にイベン王国の半分の領土を奪い取った。そして、今に至る。この戦争には二つの戦線があって、南北の間の山脈と大河によって遮られている。北の戦線を北方戦線、南の戦線を南方戦線と呼ぶ。私が担当するのは南方戦線の指揮。こちらには、臣従国のケールジャール公国の軍も存在する。ただ、このケールジャール公国はいつ裏切る又は戦線離脱をするかわからない。どちらかをされても九〇〇〇程度の兵が消える。それ以外は私の公爵領の二七〇〇〇の兵と、その他地方の兵一五〇〇〇、国の常備兵四八〇〇の総勢約五五八〇〇の軍団だ。
対して敵は総数八九〇〇〇元々サスペンダー王国は作物が豊富で人が多いため、その人を徴兵したため数が多い。北方戦線でも敵方の方が多い。ただ、北方戦線では士気、質の高さにより反攻も行われている。この兵数不利を解消するには、敵軍との決戦によって勝利し、殲滅することだ。少しづつでも削らないといけない。一体どうしたものか。
コンコンコン
「ヘッシュです。」
ヘッシュか。ああ、そういえば手記にちょくちょく出てきていた。ヘッシュ・ハートマン伯爵。私の部下だったか。
「入ってくれ。」
キィィ
ドアが開く。
「エリック公爵、随分と雰囲気が変わったようで。」
不味いな。本物では無いと思われたら流石に不味い。
「そうか?いや、今はそういうのはいい。何の話だ?」
一先ず言ったが悪手かもな。
「いえ、私の勘違いだったようです。いつも通りですな。」
いつもこうなのか。元の身体の持ち主は似た存在だったようだ。
「ゴホン、では本題ですが、北方戦線のシャプール(北方戦線の指揮官)元帥が救援を求めています。出来れば二万程度。とのことです。」
...。何と言うムチャ振りか。難しいな。もしもこの戦線から北方戦線に向かうには大規模な山脈を越えなければならない。それで戦力が減ってしまえば不味いし、何よりそんな事、ケールジャール公国が離脱する理由になるかもしれない。近い事例にスペイン継承戦争のマールバラ公があるが、あの時はあの時だ。山脈を越えるというのが難しい。いや、マールバラ公を踏襲するのもアリなのか。賭けに出るしか無いか?うぅむ、やるか。
「分かった。ただこれは出来る限り情報を隠せ。知ってる者は私と君、そしてシャプール元帥のみだ。」
「は。かしこまりました。」
山脈には小道が続いている。そして、過去の戦例を見て、どうやら敵地へ入り込める道がいくつかあるようで、それを使い、敵を急襲したという。まぁ、これは相手が歴史に詳しい場合、対策されている可能性が高いが、敵は私より若い二二の公爵が担っているよう(指揮官が病気にかかっており一時的に離脱)で、歴史知識もあまりないようだ。現地民に聞くぐらいしか方法がないだろう。で、あれば、味方部隊には敵戦線を迂回し、攻撃を行うという嘘をつき(ケールジャール公国の離脱を防ぐため)、強行軍で北へと向かい、合流すればいいだろう。北方戦線の方は数は負けているものの味方が押している。このチャンスを逃すのは良くないだろう。数は私の部隊、二七〇〇〇の内の五〇〇〇を残し行軍だ。
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