誰かと出会うことで、自分の中の景色が少しずつ変わっていく。
はじめはただのクラスメイト。
けれど、ふとしたきっかけで言葉を交わし、互いの痛みや弱さに触れていくうちに、二人の距離は目に見えない糸で結ばれていきます。
特別な事件や大きなドラマがなくても、日々のささやかな出来事や会話の中に、心を揺らす瞬間は詰まっています。
屋上で交わす言葉、カフェでの小さな冒険、文化祭の準備や音楽を通じて生まれるシンパシー。
どれもが、ありふれた日常の中でふと感じる『生きている実感』を鮮やかに描き出します。
桜音と奏太は、迷いや不安、過去の傷を抱えたまま、どう生きていけばいいのかを手探りしています。
そんな彼らが互いの存在を通じて「無理しなくていい」「泣きたいときは泣いてもいい」と、少しずつ自分を許し、前を向いていく姿は愛おしいです。
友情や恋愛といったラベルでは語りきれない、もっと柔らかくて温かな『つながり』。
誰かを大切に思う気持ちは、決して一つの形に収まらない。
親友でも恋人でもなく、でも確かに特別な存在。
自分の弱さや悲しみ、願いを歌に込めることで、言葉だけでは伝えきれない想いが、そっと相手に届いていく。
音楽が、二人の心をつなぐ架け橋になっているようでした。
この作品は、日常の中にある小さな勇気や優しさを、そっとすくい上げてくれるような物語です。
大切な人に「ありがとう」と伝えたくなったり、もう一度素直な気持ちで誰かと向き合ってみたくなったり。
誰かと出会い、少しだけ自分が変わる。
その変化を恐れずに受け入れてみようと思わせてくれる、心に響く作品です。