第2話 世界で一番安全な場所
「とと……どなたですか? 人が飛ぼうとってしてる時にまったく」
「いえいえ、そちらこそ勝手な行動は困りますですよフレデリカ様、ささっ、そんな羽は魔力の無駄ですから仕舞って。こちらの馬車へとお乗り下さい」
魔力の無駄って……この程度、私にとって造作もないのに。
それより、この方は何方かしら。
見た所、執事か何かかしら?
いえ、そんなわけないわ。なんか黒いパーティハットのようなものを被っているし。
もしかして馬を扱う人?
あれ? でも、それって何て言うんだっけ。
「えっと?」
「いやはやコレは失礼。私は学園長から仰せつかりましたモリソンと申します。この馬車の御者をさせて頂いておりますです、はい」
ああ、そうだった御者だ御者。
「えっと、どうしても乗らないと駄目ですかねーー?」
風の魔法でぴゅぴゅっと飛んで行きたいんだけど。
「はい、決まりに御座いますので、はい」
何だか意味あり気な顔をしている。たぶんコレ無視したら不合格とか、いやそれは流石に……と思ったが、あの学園長のことだ、やりかねない。
「それって……もしかして」
「はい、既に試験は始まって御座います」
「はあ……」
「どうされましたかフレデリカ様?」
「いや、これも試験内容に含まれてるってのは理解しましたよ。でもですね、馬車だと遅いだろうなと」
「ほぉ、なるほどなるほど。フレデリカ様は馬車では遅いので、飛んで行きたいそうおっしゃりたいのですね。いやはや、私の操るスーパーアメージング号を舐めて貰ってはこまりまするぞ」
「スーパーアメージング号? 変わった名前ですね。いえ、決してモリソンさんを舐めてるわけじゃないですよ。ただ、やっぱり空を飛んだ方が速いんじゃないのかなと」
「ほぉ、実際に乗った後もそのようにおっしゃられますかな?」
「へっ?」
私はキュピンと光る彼の目を見て悪寒が走った。
何かこれからとてつもないことが起きるのではないかと肌で悟ったのだ。
そして、その予想は大当たりした。
「いやぁあああああああああああああ」
いやぁあああっという間に、目的地に一番近い村ルデリアへと到着したのである。
一体どうやってそうなったのか、私は超音速の世界を体感していて叫ぶことしか出来ず、この馬車が何処を通って此処まで来たのかさえ一切覚えていない、というか見ていない。
ひとつ予想出来る事と言えば、この馬車は時空間を飛び越えることの出来る特別な乗り物だということのみだ。
そしてとうとう私は来てしまった。
なんでよりによって世界一安全な場所で研修なのだろうか。きっとそこに居る魔法使いは毎日毎日欠伸をしているに違いない。
そう現場に行くまで私はそう思っていたのだ。
しかし、今まで私達は学園いや王国から嘘を教えられていたことが此処に来て分かることになるのだが。
ポツンと岬の上に立つみすぼらしい灯台。
そこからは、身体中の産毛に電気が走るくらいの物凄い魔力量が発せられていたのだ。
安全な場所には相応しくない、膨大な力が対岸へと向けられていた。
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