第11話祝福
親族たちはスウェーデンの美少女オーサに強い関心を抱いていたようだ。
彼女の洗練された所作を見たことでますます高まったのだろう。
次代の社長夫人にふさわしい女性だと持て囃している。
零人が知っている人にもオーサは紹介していたが、今回は初対面の人がいる。
雪平一族は海外に居住している人もいるくらい巨大な一族である。
その全員が東京に集まったのだ。
零人でさえも知らない人は多かった。
オーサはことのほか緊張していると思う。
零人はオーサを和らげるためにマイクを手に取った。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。雪平グループ次期社長の零人です。今夜は私の最愛の妻をお披露目したくこの場をご用意させていただきました。よろしくお願いいたします」
オーサが息をスウッと吐くと同時に会場には拍手が巻き起こった。
彼らの楽しみは私とオーサの結婚にある。
マイクをオーサに手渡すと、彼女の方をポンと叩いて挨拶を促した。
「あ、あのう…皆様、今夜は私のために、あ、ありがとう、ございます。私が雪平一族の一員になります、オーサ・ルンドグレーンです。よ、よろしくお願いいたします」
途切れ途切れになりがらもオーサが懸命な挨拶をした。
彼女の頬は真っ赤に紅潮して体はプルプル震えている。
人見知りの彼女がこんな大勢の前で結婚の話などしたら恥ずかしがるのは無理もない。
オーサは今にも倒れそうな有り様だ。
「私はかねてよりこのオーサさんと将来を誓い合っていましたが、この度正式に婚姻を結ぶこととなりました。皆様のより一層の期待に応えるべく、一族の発展に尽くしていく所存です。」
酒で盛り上がった親族が、そうだ!と声を上げた。
他の親族たちは、オーサちゃんがいれば一族は栄華を極めると有頂天になっていた。
北欧からの美女の来訪に色めき立った。
零人とオーサの婚姻発表は雪平一族全員の深い祝福を受けることになった。
零人はその雰囲気の中で一際号泣している祖父母を見た。
「あのかわいい零人が、オーサがあんなに大きくなって…」
オーサは照れていたが、零人の顔を見てから優しく微笑んだ。
親族の一人が式は和洋どちらで行うのかと質問してきた。
「オーサの立てて上げたいので洋式、スウェーデン式の結婚式にしたいと思っています」
おお!と嬉しそうな声を上げて、これからが楽しみだなあという声があがる。
彼らの楽しみは零人とオーサの子供なのだろうか。
祖父が作り上げた会社も零人の代で三代目。
体制の安定化を図り始めたい頃でもあった。
「わ、私たちは二人で手を取り合って未来のために励んでいきます」
オーサが絞り出すような声で期待に応えた。
背中をそっと撫でてやると深呼吸をしてグラスの水を飲んでいた。
おじさんやおばさんたちは楽しそうな笑顔を浮かべて見守っている。
祝福ムードの中で私とオーサの心は雪解けを迎えて溶け合っていった。
あっという間に時間は過ぎ去り、満足した親族たちは帰路に着く。
パーティー解散後は一流ホテルに部屋を用意してある。
そこでオーサと私は…
始めて二人きりでじっくり話したいと思う。
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