燈映花
夏樫
叔父の家には、花が一輪咲いておりました。
それは一日に何度も色を変える、不思議な花でした。
朝には仄かに消えゆく月のように花弁を陽に透かし、昼には波打ち際に泡立つ波のように白と青を映しました。
そして夜には、星のように蛍のように、静かに明滅を繰り返すのでした。
ある日、その花に向かって叔父が話しかけているのを見かけたことがありました。
叔父は「さよ子、さよ子」と言いながら花を撫でておりました。
後に酒の席で父が話していたことですが、叔父には昔、さよ子という婚約者がいたそうです。
彼女は病に倒れ、あの花を残して行ってしまいました。
花が映していたのは、二人の思い出の色だったのでしょうか。
燈映花 夏樫 @manatsu__
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