2.

数日後、私はまた神社を訪れていた。


参拝を済ませ、絵馬掛けへ向かうと――また、あの古びた絵馬がひとつ、増えていた。


「小銭を落とせますように」


前回と同じ、黒ずんだ板。筆跡も筆圧も同じ。そして下には、やはり私の名前が書かれていた。


気味が悪い。

同姓同名にしても、自身の不幸を願うような内容、悪戯だろうか。心のどこかで、得体の知れない何かが忍び寄ってきている感覚があった。


そしてさらに翌週。仕事終わりに、また神社へ足を運んでしまっていた。


「電車に乗り遅れますように」


やはり私の名前がある。こんな願い、誰が、何のために? おそらく悪趣味な変人の仕業だ。これ以上気にしても無駄だと、そう思ってその場を離れた。


その帰り道、大学時代の旧友から電話がかかってきた。近くで飲んでいるとのことで、軽い気持ちで合流した。思い出話に花が咲き、気がつけば終電を逃していた。


タクシーに乗り込み、ほろ酔いの頭でふと、思い出す。


「電車に乗り遅れますように」


まさかな……いや、偶然だ。偶然に決まっている。けれどその瞬間、背中がぞわりとした。


――先週の絵馬。「小銭を落とせますように」


絵馬を見た次の日に、自販機の前で財布を落とし、500円玉だけが見つからなかったことを思い出した。


偶然? 本当に?

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