3.
私は、神社に通い絵馬を確認するようになった。怖くても見ずにはいられなかった。自分の身に起こるかもしれない不幸を、知らないことのほうが不安だった。
「自転車が壊れますように」
久しぶりに乗った自転車。走り出してすぐ、ブレーキに違和感があった。ギリギリで止まった交差点、もしもう一歩踏み出していたら、車に撥ねられていたかもしれない。手が震えていた。
「大切なものを落としますように」
父の形見の腕時計を、どこかに置き忘れてしまい、とうとう見つからなかった。
……全部、絵馬の通りに起きていた。
誰が、なぜ、私を呪う? 怖くて怖くて仕方がなかった。
その日、新たな絵馬に書かれていた願いは、これまでとは違っていた。
「爪が剥がれますように」
明らかに身体的な苦痛を伴う呪いだった。名前はやはり、私のものだった。
帰りの電車の中、不自然なほど人が混み合っていた。押し合いへし合いの中、誰かが私の足を踏んだ。
ズキン、と激しい痛みが走った。電車を降りて靴下を脱いでみると、親指の爪が紫に腫れ、翌朝には皮膚から剥がれかけていた。
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