転生したらゴリラのうんこだった〜転生して気づいた本当の価値~

カラスのカンヅメ

第1話

 気がつくと、ぼくは地面に落ちていた。


「えっ……?」


 茶色くて、ぐにゃっとした感触。熱い日差しが照りつけ、ジャングルの木々が風に揺れる。すぐそばで、大きな影が動いた。


「うわっ!」


 見上げると、そこには巨大なゴリラがいた。


 まさか、ぼくをしたのは……このゴリラ!?


「なんで、ぼく、こんな姿に……!」


 混乱するぼくの前に、ぞろぞろと小さなサルたちがやってきた。


「うわ!クサッ!」

「最悪だ!ここにゴリラのうんこがあるぞ!」

「こいつ、超クサい!」


 サルたちは顔をしかめ、ぼくを指さして笑った。


「うんこのくせに、しゃべれるのかよ!」


「お前、うんこのくせに何か考えてんの?」


 言われたい放題だった。くやしくてたまらなかった。


「ぼくはただのうんこじゃない!」


 叫んだ声は風に流される。


 サルたちはげらげら笑いながら、ぼくに木の枝を突き刺したり、小石を投げたりして遊び始めた。


「やめろよ……」


 悔しくて、涙が溢れたでも、ぼくはうんこ。どうすることもできない。


 ぼくはわけがわからないまま、そこに転がっていた。




 雨が降り、太陽が照りつける中、ぼくは少しずつ形を変えていった。乾いたり、溶けたり、虫たちにかじられたりしながら、日々を過ごしていた。


「うわあ、ぼく、消えていく……?」


 これでおしまいか……とても悲しくなったそのとき、地面の中から優しい声がした。


「君のおかげで、ぼくらは育つことができるんだよ」


 ぼくのすぐそばから、小さな芽が顔を出していた。


「君が持っていた栄養が、ぼくらの力になってるんだ!」


 確かに、ぼくの体は土と混ざり、新しい命を育てている。


「ぼくはただのうんこじゃない……森を豊かにする、大切な存在だったんだ!」


 ぼくの心は、温かい気持ちで満たされた。




 時がたち、ぼくはすっかり土に溶け、今では立派なバナナの木になっていた。


 ある日、ゴリラがやってきて、ぼくのバナナをもぎ取った。


「おいしい!」


 そのゴリラは、ぼくを生み出したゴリラだった。


「ぼくはこのゴリラから生まれ、またこのゴリラの力になったんだ……!」


 ぼくは確信した。


「ぼくはただのうんこじゃない。大切な命の輪の一部だったんだ!」


 そう思ったとき、ぼくの心は満ち足りた気持ちでいっぱいになった。


「どんな姿になっても、自分には意味がある」


 ぼくはうんことして生まれ変わったけれど、無意味な存在じゃなかった。


 みんなも、どんなときでも、自分の価値を忘れないでね。


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