第7話 我は顕聖二郎真君

天界の守護者、半神半人の軍の長なり。

神々の戯れで生まれた我は天界の一員とはされているが

警備、護衛、門番など決して権力の中枢に近い要職に就くことはできぬ。

そんな折、天界に歯向かう一匹の猿が宮殿の中枢まで忍び込み狼藉三昧。

無論我々天界軍は迎撃の任に当たりはしたが、多くは猿に蹴散らされてしまった。

軍団の長である我との一騎打ちの際に猿は捕縛されましたが・・・あの時

もうすこし猶予があればあの猿を打擲できたのにという思いである。

猿に判決が下され、五行山の祠に死ぬまで監禁さける刑を受けた。

火で焼いても、水に沈めても、剣で八つ裂きにしても死ななかったからだ。

斉天大聖の乱はこれで一件落着となりましたが、数百年の時を経て

事情が変わりました。

唐の国「長安」で1人の高層が天竺に仏教の経典を取りに行く事と

なりました。

その頃天界はその教義である道教が新興宗教の仏教に押され

融和政策として仏に上り詰めた釈迦を大日如来として取り込んだ頃でした。

表向きには仏教を擁護している訳でこの難行を邪魔することはできません。

さりとて仏教の伝来の強化をむざむざと達成させることも癪です。

そこで毒をもって毒を制すのごとく、あの猿を弟子として修業させる行を

玄奘という僧に課しました。

あの猿に縄をつけて利用できるのも良し、猿が玄奘を殺してしまえば尚よし。

はたして玄奘は猿を仏門に帰依させました。それは裏で天界の非主流派の

(観音菩薩など)手助けがあったとしても認めざるをえませんでした。

苦肉の策として天蓬元帥と捲簾大将をその罪を減じる事を条件に間諜として

送り込みました。

しかし玄奘の徳の高さ故に、今では三人とも三蔵(そう今では三蔵と呼ばれています)

に心酔してしまったようです。

時は過ぎました。

三蔵は天竺でインド語から唐の言葉に経典を翻訳する作業を終えて帰路について

います。

このままでは唐に仏教がさらに伝播してしまいます。

西王母は独断でこの帰路の邪魔をしようとします。しかし表立って行動してしまえば

非主流派の反撃にあいます。そこで最後の試練を与えるという事で大日如来の承諾を

とりつけました。

西王母は次郎真君に命じます。

「どんな手段を使っても玄奘三蔵の唐入りを阻止せよ」

貴方は答えます。

「ははぁ、策をめぐらし手下を使って三蔵の唐入りを防いでご覧に入れまする。」

まずは砂漠の終わりの小高い丘に庵を作る。水を入れた瓶を置いておけば必ず

小休止するか寝入るはず。

そこで魔火香の効能により「胡蝶の幻術」を一行にかける。

さすれば五体と心は離反し、元には戻らず混ざり合う。

この状態で三蔵と釈迦には問答をしてもらう、彼らには一瞬だが実際は一晩は

かかるであろう。


そして・・・長年醸造した「埋伏の毒」の計が完成する。

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