第5話 西海竜王・玉龍
私は西海竜王です。
元々は竜宮城を統べる四海竜王の第三太子である敖閏、別名は玉龍
でした。
一番弟子の悟空には岩猿の頃に故郷の竜宮城の至宝である「如意棒」
を奪われた因縁で内心は良く思ってはいません。
ですが師匠からの信頼も厚く、何より滅法強いので表立っては逆らう
ことはできません。
八戒はこれは見た目のとうりの幇間(たいこもち)なので持ち上げておけば
無害な存在です。
沙悟浄は理屈は通じるのですが何せ陰気で付き合って面白いことは無い
ので適当にはぐらかして怠けています。
那托は見た目は子供なのですが手ごわい相手と知っています。
牛魔王と羅刹女の息子であればいつ寝首をかきにくるかわかったもので
はありませんが、可愛いのでこの事は忘れがちです。
天竺についてから師匠の翻訳の手伝いをできるのは実は那托と自分
だけという事実に愕然としました。英雄、豪傑は平時には暇を持て余す
厄介者だったという事です。
東屋で
「俺は竜宮の龍王!画竜点睛!!」
誰かが「弱肉強食」「清廉潔白」「牛魔王」と
「天上天下唯我独尊」「りんぴょうとうしゃかいじん?」
と言っていたようです。
暫時
「起きよ玉龍!いや西海竜王というべきか?」
「誰だ私の名を呼ぶやつは!」
「我は天界の使者、大日如来の権現なり」
「そんなこと信じられるか!!私の頭の中から出ていけ!」
「玉龍よ、お主は長安に着いてどうする?孫悟空は三蔵の一番のお気に入り。
そのまま弟子として残るか華崋山の王に戻るだろう。天蓬元帥と捲簾大将は
元々は天界の官吏、その職に戻ることを期待されておる。だがそれでいいのか?
お前の故郷の至宝「如意棒」は悟空に奪われたままだぞ。
このまま故郷に帰っても苦役が終わっただけだ。故郷に錦を飾りたくはないのか?
「うるさい、うるさい、そこらへんのことは考えておるわ!」
「そこでだ、我は提案する。孫悟空の体とお前の体を一時的に交換してやる。
そして我に従え。案ずるな、三蔵と高弟達の命まではとらん。わが天帝に誓い
約束する」
「お師匠を裏切ることなんかできるか!」
「三蔵はもう現世にはいない。残念だがそうなのだ。万に一つの可能性はな
お前たちが三蔵の苦行を邪魔しないことだ。多くは語らんがこれは真実なのだ」
「それが本当なら私に何の得があるんだ?」
「お前は三蔵のために自分の身と名を捨てる気概があるか?
三蔵の覇業を続ける気概があるのか?
それが報酬といえば報酬だ。それとも天界に昇り兄弟子より高い地位を望むか
それもよかろう。」
「話はそれだけか?」
「それだけだ、この話の概要は忘れるが、命令は心に刻まれておる。
途中までは操り人形だが、最後の最後には自由意志をくれてやる。
これはなんだっけ、おまえらのいう、御仏の慈悲よ、では眠れ」
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